子どもが平日に学校を休んで保護者と過ごすラーケーション。「ラーニング」と「バケーション」を組み合わせた造語で、昨年度、全国に先駆けて愛知県が導入し、茨城県、山口県など、全国に導入の動きが広がってきています。旅を子どもの教育ととらえる「旅育」も注目を集めています。現代を生きる子どもたちに“ほんもの体験”が必要とされるのはなぜでしょうか。教育評論家の親野智可等さんに子ども時代の体験の意義について伺いました。

MENU 家族でラーケーションを使い「東日本大震災」を学ぶ 学校生活だけでは味わえない体験ができる 子どもの人生に「知識の杭」を打ち込む

家族でラーケーションを使い「東日本大震災」を学ぶ

 3歳から10歳まで、小学生2人を含む男の子4人を育てる愛知県在住の女性(40)は、今年6月、家族6人で仙台市を訪れました。ただの観光ではなく、同県が昨年度から導入した「ラーケーションの日」を利用し、子どもたちの学びを意識した旅を計画しました。

 旅のテーマは「東日本大震災」。いつ訪れるかわからない大地震に備えて、子どもたちと一緒に学んでおこうと考えたからでした。会社員の夫(42)と半年前から計画を練り、子どもと図書館の本やテレビで下調べをしてから仙台市へ向かいました。

 被災からの復興を願ってスタートした「東北絆まつり」は、東北6県の祭りが一堂に会する大イベント。この日に合わせて、ラーケーションは6月に取得。いつもは一家の遠出となると車ですが、平日なのであえて新幹線で現地に向かったそうです。

「平日で人出が少なくて親も心に余裕ができるので、新幹線の切符の買い方から乗り方、マナーまで、いろいろ教えてがあげることができました。新幹線の中で駅弁を食べたのもいい思い出です」と女性は言います。

 現地では思いがけない交流も生まれました。

「その場で知り合った地元のおばちゃんたちの計らいで、子どもたちは特等席でお祭りを見物させてもらえました。震災のお話もしてくださり、子どもたちにとって心に刻まれる体験になったと思います」

学校生活だけでは味わえない体験ができる

 この祭りのクライマックスは日曜の夜なので、長男次男は翌日の月曜にラーケーションを使って小学校を休み、ゆっくり最後まで楽しみました。帰りに立ち寄った東京では平日のキッザニアで職業体験も満喫したそうです。

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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