将来にわたっての健康な歯やきれいな歯並びは、子どものときの生活習慣やケアがカギを握ります。歯が生えてさえいれば、誰もがかかる可能性のあるむし歯。新江古田こばやし歯科クリニックの小林奈未子さんに、早期発見のポイントや治療について聞きました。『AERA with Kids 2024 秋号』(朝日新聞出版)から紹介します。
【図】むし歯のリスクが高いのはこんな子!チェックリストはこちら白くにごった歯は初期のむし歯の可能性も
むし歯の原因としてよく知られているのが、ミュータンス菌です。この菌が口の中に残っている食べかすの糖分を栄養にして増殖し、強い酸を作って歯の表面のミネラルを奪います(脱灰)。しかし、通常は唾液の中に含まれるミネラルを取り込むことで、歯の表面はもとに戻ります(再石灰化)。「脱灰」と「再石灰化」、この二つのバランスが崩れ、ミネラルが奪われ続けると、むし歯となります。脱灰の症状について、小林歯科医師はこう言います。
「脱灰が進むと歯の表面が白くにごったように見えます。この段階で歯科医院に行けば、フッ素塗布やていねいなブラッシングだけで、再石灰化することもあります。一方、穴があいてしまうと削る治療をするしかなくなってしまいます」
初期のむし歯は自覚症状がなく、白くにごっているだけだと、保護者も見逃すかもしれません。
「デンタルフロスの糸部分がほつれると、むし歯のサインと言われています。また、3カ月に1回程度、定期健診を受けていれば、たとえ初期のむし歯ができても、早期なので削らない処置だけですむことが多いですよ」(小林歯科医師)
むし歯のQ&A
Q むし歯になりやすいのはどんな子?
脱灰と再石灰化のバランスは、唾液の量や質、歯の強さ、飲食の回数などによって左右されます。特にリスクが高いのが、ちょこちょこ間食をする習慣がある子です。食べたあとすぐに歯をみがけないときには、水やお茶を飲むだけでも予防効果があります。
Q 水やお湯がしみるのはむし歯だから?
歯の根が出て、神経が敏感になる知覚過敏のほかに、むし歯の可能性もあります。穴があいて、むし歯が神経に近づいているのかもしれません。特にお湯がしみる場合は要注意です。一度、歯科医院を受診することをおすすめします。
Q 乳歯のむし歯は治療しなくてもいい?
治療は必要です。乳歯に大きなむし歯があり、根の部分がうんでいると、永久歯が通常とは異なる方向から生えてくることがあります。また、むし歯によって乳歯が抜けると、あいたスペースに周囲の歯が近づき、将来の歯並びにも影響します。
Q 歯が生えていないところが痛いと言う…
一番奥の6歳臼歯が、歯ぐきを突き破って出てくる際の痛みかもしれません。子どもが違和感を「痛い」と表現している場合もありますし、歯肉炎になって歯ぐきが盛り上がり、上の歯と当たって痛みが出ているケースもあります。後者の場合、消毒したり軟膏を塗ったりして痛みを軽減します。
(取材・文/中寺暁子)
AERA with Kids編集部