子どもを育てるということは、すべての親に課された重い責務です。相談者さんは、子どもを広い教養と徳を持ち、明るい未来をつくっていく、そんな「道を志す人」に育てたいと思いませんか?

 そうであれば、「自分の子どもなら、恐怖を与えて言いなりにさせていい」という考えは、間違っています。まず父親である相談者さん自身が、「弘毅」すなわち、大きな包容力と強い意志を備えるべきなのです。

 息子さんが「なまはげ」を見せられて「やんちゃ」をやめるのは、一時的なことでしょう。それよりも、なぜ公共の場で大声を出してはいけないのか、昼寝の時間に暴れてはいけないのかを、父親として広い心と強い意志をもって、息子さんに教えなければならないのです。

 大声を出したり、暴れたりしてはいけないというのは、結局、「自分が嫌だと思うことは、他人にもしてはいけない」という教えにもつながります。

 孔子は、自分の子どもにも弟子たちにも、「仁」の大切さを教えました。「仁」とは、人を思いやる気持ちです。相談者さんは、やんちゃな息子さんを、まず「仁」で満たしてあげてはいかがでしょうか。可能な範囲で、エネルギーを持て余している息子さんの気持ちを受け止めてあげるのです。

「なまはげの動画で恐怖を与えること」と「やんちゃな行為の一時停止」の連鎖を断ち切ったときに、息子さんは、そこに「仁」の一端を見つけられるのかもしれません。

【まとめ】

自分がして欲しくないと思うことは、他人にはしないこと。包容力と強い意志をもって、息子さんを受け止めてあげよう

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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