「自分で考えて意見を持ってほしい」という親御さんの声は最近よく聞かれます。社会の影響もあり、親御さんの気持ちはよくわかります。ただ、4〜7歳ごろの子どもが物事を自分で考えて決めるのは、脳の発達段階的に難しいんですね。もちろん、やりたいことへの情熱やエネルギーはあります。

 でも、自分の意思を言葉で説明できるようになるのは9、10歳ごろから。ですから、目の前の幼い子に、言葉での説明を求めすぎていないか、親御さんは気をつけたいところです。

今できていることを認めて信じる

――相談者さんは、お子さんが取り組めるように工夫するのに疲れ、できなくてイライラする姿を見ることもつらいと感じています。どう対応したらいいのでしょうか?

 親御さんが疲れてしまうのは、「自分がこうすれば子どもはこう動いてくれるはず、力を発揮できるはず」という過度な期待があるからではないでしょうか。子どもが想像通りに行動しないことで、期待が裏切られた気がして疲弊する。近年、このような思考に追い詰められている方が増えていると感じます。その背景には、子どもの行動に対して「親がしっかりしていないからだ」「子どもが何かしたら親のせいだ」などと、親が子どもをコントロールしないといけないかのような社会のプレッシャーがあるでしょう。

 でも、親がどれだけ子どもをコントロールしようと頑張ったところで、行動するのは子ども自身。例えば、好奇心旺盛な子なら興味のあるものが見つかったらバーッと行く。その場でのめり込んで、別のことに興味を持ったら前のことをきれいさっぱり忘れる。それはその子のそういう「才能」ですから、一つのことを粘り強く継続できる子に「変えよう」とするのはナンセンスです。無理に頑張って変えようとしても当然うまくいくはずもなく、親の独り相撲で疲れてしまうのではないでしょうか。

 もっとお子さんを信頼してみてはどうでしょうか。例えば「この子は最初はもじもじするけれど、30分ぐらいすれば動き出せるから大丈夫」と、親が子どもを理解していれば子どもがもじもじしてもイライラしませんよね。お子さんがこれまでやってきたこと、頑張ってきたことをベースに子どもを理解して、「こういう子だからこの約束はきっと守れる」という信頼をすればいいと思います。子どもを理解することで、その子の行動も選択したことも信頼できるようになります。

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