子育て中は自分の洋服を選ぶのに「この服を着られるのは、もうちょっと先かな」と避けたり、気づくといかにも「お母さんっぽい」格好になっていたりしませんか? パリ在住の作家・藤原淳さんは、フランス人に「ママさんルック」は存在しないと言います。朝カフェに集うママたちはどんな服装であらわれ、どんなファッション観を持っているのでしょうか? 藤原さんの著書『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)からお届けします。

MENU 「お母さんっぽい」格好は一人もいない ママさんルックは「理想の母親像」があるから 「いいお母さん」の前に「幸せなお母さん」に

「お母さんっぽい」格好は一人もいない

「働くお母さん」や「ワーキングママ」という表現がありますが、パリでは一切聞かない言い回しです。あまりに当たり前のことだからです。反対に「ステイ・アット・ホーム・ママ」という表現を聞いたことがあります。この「在宅ママ」は、いわゆる専業主婦、もしくは在宅ワークをしている女性、つまり少数派のお母さんのことを指します。

 ある日、私は娘が2歳になった時から通っている保育園の「朝カフェ」に参加しました。朝の8時半から始まる保育園ですが、子供を送り届けた後、任意の親が近場のカフェに集まり、出社前の貴重な時間を使って情報交換をします。月一で行われるこの朝食会に集まるのはほとんどがお母さん。時々お父さんがチラホラ交ざるという感じです。

 今日集まっているのは、老人ホームで経理の仕事をしているアンナ、デリバリー系のスタートアップに勤めているセリーヌ、薬品業界でマーケティングをしているというマノン、パティスリーを経営しているジョゼフィーヌ、そして大学教授のエミリーと、働く女性ばかりです。在宅ママは一人もいません。

 おしゃべりなパリジェンヌが数名集まると、話題は尽きません。保育園で行われた行事の感想、子供の病気の話、習い事に関する情報交換。ひとしきり子供の話が終わると、今度は仕事の話になります。

 初めて朝カフェに参加した私は感心してしまいました。時間の無駄かもしれないとタカをくくっていたら、とても有益な会だったのです。パリジェンヌにとって、ママ友との朝カフェは異種業界とのネットワークを広げる好都合な機会でもあるのです。

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