エゾマイマイはつつかれると移動速度が速くなる


 (1)のエゾマイマイが〝走って逃げる〟ことは、森井さんと北海道札幌啓成高校科学部の生徒たちとの共同研究チームによって明らかになった。
 研究チームは装置を使って、エゾマイマイと、同じ北海道に生息する近縁種であるヒメマイマイの移動速度を調べた。まず、通常の状態での移動速度について、装置を立てたり寝かしたりして、垂直方向と水平方向の両方を調べたところ、エゾマイマイはヒメマイマイより移動速度が1・2~1・4倍ほど速いことがわかった。

ヒメマイマイ。エゾマイマイの近縁種だが、小型でからの大きさは約20~25㎜
カタツムリの移動速度を調べる生徒
図:移動距離や速度を調べる室内の実験で使われた装置

 続いて、装置の下の窓から手を入れてカタツムリをつついた後、移動速度がどう変化するかを調べた。ヒメマイマイはつつくと殻に閉じこもってしまったので、移動距離はほぼ0。一方、エゾマイマイはつついた後、移動速度が1・2~1・3倍ほど速くなった。この結果について森井さんはこう解説してくれた。

図:ヒメマイマイとエゾマイマイのつついた前後での移動速度の変化

「実験でエゾマイマイをつつくことは、天敵に襲われたときの刺激にあたりますから、エゾマイマイは、天敵に襲われるとふだんよりも速く逃げることがわかりました。カタツムリには私たち人間のような足はありませんが、この速度変化は人間が〝走って逃げる〟のに等しいと思います。エゾマイマイは殻を振り回すだけでなく、走って逃げるという、ほかのカタツムリでは知られていない行動をとるとわかりました

同じ先祖を持つのにどうして行動が違うのか?


 (2)のエゾマイマイが「周日行性」であることは、森井さんが北海道の森の中にテントを張り、5日間かけて調べた結果わかった。この調査では、エゾマイマイとヒメマイマイの自然の中での活動(移動距離)の違いを明らかにするという目的があった。

 そのときに使った装置は、カタツムリに糸をつけ、糸を巻いたボビン(筒状の糸巻き)を通した竹串を地面に挿すというもの。カタツムリが移動するとボビンから糸が繰り出されるので、糸の長さを測れば、カタツムリの移動距離がわかる。

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