なかなか踏み込めなかった「絶縁」

――今はもう親子の縁を切っているそうですね。

 まず短大時代は寮で暮らし、就職後はひとり暮らしを始めて、母とは物理的距離を置きました。その家の住所は母に知られていたのですが、その次の引っ越し先は教えず、居場所がわからないようにしました。さらにその数年後に結婚し、ケータイを新しく買い替えたことを機に電話番号も変え、母との連絡手段を絶ちました。

――親との絶縁は勇気のいることだったのではないでしょうか。

 そうですね。小さい頃から母に「お前は親を見捨てるようなひどい人間なんだ」「いつか私のことを捨てるつもりなんでしょ」と言われ続けて育ったので、親のことを見捨てちゃいけないのかな、と思い込んでなかなか絶縁に踏み込めませんでした。

 絶縁するまでに何度も「やっぱり会って話し合ったほうがいいのかな」と迷いましたが、そのたびに周りから「やめときなよ」って止めてもらえて。周りの人たちのおかげで少しずつ「見捨てるな」という母の洗脳が解けていき、「会わないほうがいい」という固い決意ができるようになりました。

――毒親のマンガを描き始めたきっかけはどんなことでしたか。

 マンガを描き始めたのは、うつ病を改善するためでした。就職してからうつ病にかかってしまったんです。その頃は既に母と縁を切っていましたが、精神科にかかったら過去のトラウマが原因だとわかって。服薬もしましたが、ネットでトラウマを克服する方法を探していると「日記療法」という療法にたどり着きました。つらかったことや今の思いをノートに書いて自分と向き合うというものでした。主治医に挑戦してみていいか尋ねたら「合っているかもしれませんね」と言われ、始めてみたんです。

 子どものころから絵が得意だったのですが、最初のうちはイラストは描かずに頭に浮かぶ過去の出来事をノートになぐり書きしていました。すると涙が止まらなくなって。でも心がスッキリしたんです。少しずつ病気もよくなってきたとき、「ノートに書いている内容を得意な絵と掛け合わせてみよう」と思い立ちました。それをインスタグラムに投稿し始めたんです。独身だった5年くらい前から始めました。

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