NHKの大河ドラマ「光る君へ」でも話題の平安時代の小説「源氏物語」。著者の紫式部が生きた時代、人々はどんなジェンダー観を持っていたのでしょうか? 小説家で、平安文学にくわしい奥山景布子さんに、紫式部になりかわってもらって、当時の女性と男性を巡る社会状況を解説してもらいました。小中学生向けのニュース誌「ジュニアエラ2月号」(朝日新聞出版)からお届けします。
【テスト】あなたのジェンダーバイアス度をチェック!(全2ページ)紫式部が出題するクイズに挑戦!
Q 平安時代の男らしさ、女らしさに関するエピソードを教えてください。
A それでは、くいず形式でお答えしましょう。
くいず1:男と女は違う文字を書いていた うそ? ほんと?
公文書がすべて漢文で書かれていた時代なので、男(公文書)は漢字(漢文)、女(私文書)は仮名(和文)を使っていました。男性は女性との手紙などプライベートでは和文を使いました。「源氏物語」は和文で書かれた作り話なので、「おんなこども」の読み物とされ、漢文で書かれた歴史書や漢詩に比べ、格下の(現代でいう「サブカルチャー」)文芸とみなされていました。かといって女に漢文の知識がまったくないのが必ずしもよいとは限らず、男性が面白がってくれる程度には知っていたほうが活躍の場が得られる場合がある(清少納言などがよい例です)など、二重基準のような側面もありました。
(答え:「ほんと」)
くいず2:女は人前で泣いてはいけない うそ? ほんと?
言語学者の山口仲美先生の研究によると、「源氏物語」の中で、人前で堂々と泣くのは圧倒的に男性が多いです。なぜ?と考えてみると「女性は自分の姿や声を他人にはっきり知られてはいけない」という考え方があったからだと思われます。当然、感情を表に出す機会も少ない。これとおそらく連動しているのが音楽です。箏や琵琶の演奏は男女問わず行いましたが、笛と歌は男性のみ。女性は口を動かす様子をできるだけ人に見せないほうがよいと考えられていたからでしょう。(答え:「ほんと」)
くいず3:土地や建物は男が相続することが多かった うそ? ほんと?
次のページへ紫式部の時代からみた現代女性とは?