今、若い世代に市販薬の過剰摂取「オーバードーズ(OD)」が急増しています。「ハイになるため」「気分を変えるため」に乱用する人が多いようですが、大量に飲めば最悪の場合、死亡するケースもある大変危険な行為です。そもそも、子どもたちのオーバードーズの背景には何があるのでしょうか? 小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ3月号」(朝日新聞出版)からご紹介します。

MENU 高校生の60人に1人が、市販薬の乱用経験あり 「生きづらさをやわらげるため」 相反する気持ちが共存

高校生の60人に1人が、市販薬の乱用経験あり

 薬局やドラッグストアには、気軽に手に取れる薬がたくさん並んでいる。最近、この市販薬を一度にたくさん飲む危険な行為が、子どもの間でも広がっている。「オーバードーズ(OD、過剰摂取)」と呼ばれる。

 厚生労働省の研究班が2021年度に実施した高校生への調査は、専門家の間でもショッキングな結果だった。過去1年に市販薬を乱用した経験のある高校生は60人に1人。全国の約4万5千人が回答し、1・6%が、過去1年に「ハイになるため」や「気分を変えるため」に、決められた量や回数を超えて市販薬を使った経験があると答えた。

 落ち込んだ気分を変えたり、不安や苦痛を忘れたりしようとして、ODするケースが少なくない。だが、大量に飲めば、毒でしかない。嘔吐、腹痛、頭痛、耳鳴り、意識障害などが起き、死亡する人もいる。「市販薬だから大丈夫」ということはない。

 ただ、この問題で最も大切なことは、ODしてしまう子どもの置かれた状況だ。先の厚労省研究班の調査では、ODを経験した高校生は「大人不在で過ごす時間が長い」「親しく遊べる友人や相談ができる友人が少ない」「コロナ禍でストレスを感じている」といった特徴があった。

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阿部彰芳
阿部彰芳
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