「もしも佐渡島がなくなったら」コンピューターでシミュレーション

 今回の日下さんたちの研究は、大きく三つの段階に分けられる。

 ① 北西の季節風が強く吹くときに新潟市で雪が少ない過去の事例を集め、風向き別の各地の積雪の分布(どの地域でどのくらいの積雪があったか)を確かめ、図に描き出した。佐渡島がブロックしていたとすると、北西の風だったら佐渡島の風下にあたる南東で積雪が少なく、北北西の風だったら南南東で積雪が少なくなるはずだ。この作業で、実際にそうなっていることが確かめられた。

 ② ①で選んだ事例の中から典型的なものを選び、そのときの気象データをもとに、コンピューターシミュレーションを行った。その結果描き出された積雪(降水量)の分布は、実際の観測から得られた分布図とよく似ていた。これにより、コンピューターシミュレーションは信頼できることがわかった。

シミュレーションで描き出された積雪(降水量)の分布(図2-2)と、実際の観測から得られた分布図(図2-1)(画像・データ提供/筑波大学計算科学研究センター・日下博幸教授)

 ③ 現実にはない「もしも」の条件で、コンピューターシミュレーションを行った。その結果、「佐渡島をなくしたら」、新潟市では雪が多くなった。また、「佐渡島を北東に移動させたら」、新潟市の北にある櫛引や酒田で雪が少なくなった代わりに、新潟市では雪が多くなった。次に、「佐渡島を遠ざけたら」、新潟市はブロックが遠くなり、雪は多くなった。さらに、佐渡島の風下150~200kmくらいまでは影響があることも確かめられた。

佐渡島をなくした場合(図3)、佐渡島を北東に移動させた場合(図4)、佐渡島を遠ざけた場合(図5)のシミュレーション図
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