安浪:今の時代は過渡期だと思いますが、怖いのが、従来型でない、新しい教育が全てキラキラして見えてしまうことです。一歩引いて、その教育のどういうところに自分は惹かれているのか、それはわが家の価値観に合っているのか、わが子に向いているか、といったことを考えてみたほうがいいですね。

安浪京子さん

■放置放任と主体性重視の違い

矢萩:生徒の主体性を大事にすることをうたう学校で注意したほうがいいのは、先生たちが放任なのか、あるいはしっかりナビゲートしているのか。この二つは一見似ているようで大きく違います。主体性がある子だけに活躍の場があって、主体性のない子は何もせずにウダウダしている学校もあります。いまやる気がない子でも、寄り添って選択肢を提示して興味の種まきをしたり、寄り添ってナビゲートしたりすることで、主体性のない生徒の目を開かせるような教育をやっている学校であれば、「教えない学校」というスタイルに意義があります。でも、ただ放置、放任しているのなら、すでに主体性を持っている生徒たちが目立っているだけなんです。そういう子たちはどの学校に行っても勝手にやるんですよ。そこはちゃんと見極めたほうがいいです。

安浪:生徒が華やかに活動していたとしても、元々自主的にできる子たちだけがやっているだけなのかもしれない、ということですよね。それはすごく納得します。

矢萩:学力の差という点は、安浪さんがおっしゃる通りだと思うのですが、新しい学びをやっていた子がこれからどうなるかというデータはまだ出ていない。とはいえ、データが出てからじゃ遅い。新しいことというのは、データを待っていてはダメなんです。その学びが現代の社会にマッチしているか、わが子に合っているのかを判断して、家庭として合意できるかを自己決定する。この三つの柱がしっかりあるかどうかが大事だと思います。

安浪:結局、いつもお話していることと同じになりますが、まずはご家庭の軸を持つことに尽きると思います。親御さんがどういうスタンスで、どのような教育を求めているのか。そこから学校に何を求めるものが見えてきます。だから何も持たずに学校が提供しているものだけ見ると、従来型か目新しいかの、データや成果の有無でしか判断できなくなってしまいがちです。

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