「お父さんにとっての偏差値50の感覚は、公立中学校の平均的な子どもたちです。しかし、中学受験における偏差値50はとてもハイレベル。首都圏の中学受験生たちが競い合う、極めて高い水準での平均値です。それを、自身が高校時代に見下してきた子たちと同じレベルだと勘違いをしていました」
A君は御三家を狙えたほどの実力を持ちながらも、中学では成績び悩む結果に。せっかく入学した学校も父親から罵られたうえ、自身も「自分が周囲より圧倒的に賢い」と思い込んで勉強をおろそかにしてしまったことが背景にあるようです。その一方で、A君が入学した学校にあこがれて入ってきた同級生たちは前向きに勉強に取り組み、成績を伸ばしていったといいます。
「たとえ第二志望、第三志望に進学することになったとしても、進学先がいい学校だと思えるかどうかがとても重要です。親の声かけは色濃く影響するため、親御さんが率先して進学先を『子どもにとって最良の学校だ』と前向きに捉えましょう」
偏差値30からの最上位校へ、成功の鍵は親のポジティブさと子の素直さ
西村先生の教え子に、A君一家とは対照的なご家庭がありました。中学受験で偏差値30程度の学校に進学したB 君です。彼の親御さんは、どんな結果でも決して子どもをとがめることはなかったそうです。
「模試で偏差値25を取ったときでも『ここまで間違えられるなんて素晴らしい!』と笑い飛ばすようなお母さんでした。中学受験についても、決して失敗だとはおっしゃらず『行けるところがあってよかった』と。その後、彼はコツコツと勉強を続けて、早稲田大学の政治経済学部に合格しました」
B君が飛躍的に成長した理由は、彼の素直さにもあるといいます。
「彼はのちに『先生の算数は難しかったけど、面白かった』と言ってくれました。彼の中で勉強を頑張っていると、楽しいことを見つけられるという感覚があったようです。また、最後の授業で私が『大学受験では英語が一番大事だから、文系・理系問わず毎日30分は勉強しよう』と言ったことを覚えて実行してくれていました。お母さんも継続のためにB君に声をかけ続けていたらしく、親子で努力した結果です」
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