前日に押し寄せた不安。塾の仲間に救われた

 志望校は桜蔭と、文化祭を見て気に入った共学校の2校に決めた。成績は合格ラインを上回っていたが、桜蔭の入試前日、弟から「初奈ちゃん、明日大丈夫なの?」と聞かれた途端、なぜか一気に不安が押し寄せた。そんな磯貝さんを救ったのは、一緒に桜蔭を受験した塾の友人と、受験生を励ますために桜蔭の校門前で待っていた塾の先生だった。みんなで円陣を組み声を掛け合うと、いつしか気持ちは前向きに。無事に入試を終え、出願した2校ともに合格を果たすことができた。

「私は興味を抱いたことを調べ、疑問を解決する作業が大好きなんだと、中学受験で改めて実感しました。途中、学習意欲が下がった時期もありましたが、楽しさより苦しさが上回る受験勉強にはならなかったと思います」

 さまざまな情報をわかりやすく伝えるアナウンサーの仕事に興味を抱いたのは、中学生のころだ。「将来アナウンサーになったときの強みにしたい」と、1日10時間の猛勉強の末、高1の夏休みには気象予報士試験に合格。そのことが、大学在学中に抜擢されたお天気キャスターの仕事や、後のキャリアにつながった。

中高時代の友人こそ受験で得た最高の財産

 中学では英語劇部、高校では料理部に所属。自由登校となる受験直前期も学校に通い詰め「一番、学校生活を満喫した生徒かも」と笑う。

磯貝初奈さん(撮影/写真映像部・東川哲也、スタイリング/青柳裕〈Azzurro〉、ヘアメイク/かんだゆうこ)

「今も同級生と会えば、話は尽きません。今後の人生でもずっと仲良くできるであろう友人と出会えたことが、中学受験で得た一番の財産です」

 わからないことは徹底的に調べる性格は、今も変わらない。大学は理系専攻だったが、政治学、経済学といった文系科目を学ぶ大学院に進学したのは「ニュースとして報道される出来事の背景を理解できるようになりたかったから」と語る。目標は「百知った上で、一を語れる」ニュースキャスター。磯貝さんの学びの日々は、続く。

(文=木下昌子)

AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2024』より

いそがい・はな/フリーアナウンサー。中学受験で桜蔭学園に進学。15歳で気象予報士試験に合格(当時の女子最年少記録)。東京大学理科一類在学中にニュース番組のお天気キャスターを務め、大学卒業後、中京テレビを経てフリーに。現在は「サンデーLIVE!!」(テレビ朝日系列)に出演するほか、今年4月から東京大学公共政策大学院在学中。

偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び 2024 (AERAムック)

朝日新聞出版

偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び 2024 (AERAムック)
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木下昌子
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