小川 気づく人はいっぱいいるんじゃないですか。ただ忘れてしまうのかも。
高濱 「気づく」というのは、物事を見る入り口が違うということ。そしてその気づいたことを流さない力も必要だね。そのままにしない。だって「わからないこと」ってすごく大切だから。宝物だもの。
小川 確かにわかったふりは絶対しないほうがいいですね。すぐにわからないことも多いけど、気になったことは忘れずに自分の中にストックしておくといいかもしれない。ぼくは、野球のストライクとボールの謎が中学のときからずっとわからなかったけど、大学になって英語の文献で調べて判明して、ようやく納得できましたし。
高濱 ストライクは動詞なのに、ボールは名詞という、あの謎ね。ぼくは野球少年だったけど、まったく気づかなかった。
小川 ボールってそもそも野球の道具なのに判定名になっているのもおかしいし。
高濱 この話を小川さんから聞いてから、こんなやつがいてさ、って会う人会う人に話してますよ。では理由をどうぞ!
小川 ちょっと長くなるけど、これは野球のルールが固まっていく過程とともにあるんです。最初のころ、バッターは自分の好きな球が来るまで待ってそれを打っていればよかったそうです。でもそれだと試合時間が長くなって仕方がない。そこで一定のゾーンに入ってくる球を3回以内に打たなくてはいけないルールにした。つまり「ストライク=打て」なんです。命令形ですね。
高濱 だから動詞。
小川 一方、ピッチャーはバッターが打ちにくいところやゾーンギリギリに投げようとする。それもまた試合時間が長くなるから、それはアンフェアなボールになると。で、そういう球を4回投げたらバッターは自動的に進塁できることにした。ボールはアンフェアボールの略なんです。だから名詞。
高濱 面白い! 納得する。
小川 そうなんです。納得がいけば気持ちがいい、納得いかないものは気持ち悪いし、ある意味許せない。
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