「メジナは海の中で仲良く群れて泳いでいます。せまい水槽に一緒に入れたら、1匹を仲間はずれにして攻撃し始めたのです。けがしてかわいそうで、そのさかなを別の水槽に入れました。すると残ったメジナは別の1匹をいじめ始めました。助け出しても、また次のいじめられっ子が出てきます。いじめっ子を水槽から出しても新たないじめっ子があらわれます。広い海の中ならこんなことはないのに、小さな世界に閉じこめると、なぜかいじめが始まるのです。同じ場所にすみ、同じエサを食べる、同じ種類同士です」(『完全版 いじめられている君へ いじめている君へ いじめを見ている君へ』<朝日新聞出版>から。朝日新聞連載「いじめられている君へ」さかなクン「広い海へ出てみよう」2006年12月2日掲載)
小さな世界。それは学校や会社のような大きな集団だけではないんですよね。3人揃うと社会ができる、と聞いたことがあります。そしてなるべく旅行は3人で行かないほうがいいとも。社会=小さな水槽では、必ずどこかで2対1の構図ができるから。
前述の親族もそうですが、これ、3兄弟にもめちゃめちゃ当てはまる!!ということで家庭という「最小の社会」の中でのいじめ防止と意識づけが目下の課題な今日この頃です。
小6と小2と年中の男子3人は、そこそこ年も離れているので普段はわりと平和です。
(というより年が離れているはずなのに同じ遊びを一緒にしていることにびっくり……なんなら長男が一番楽しそうに見えますけど?)
揉め始めるのはだいたい勉強や食事などでテーブルについているとき。他愛もない会話からものの言い方やご飯の食べ方で文句が出始め、2対1になりがち。観察しているとどうも真ん中の子が上か下どちらかについて対立関係をつくっているように見えます。年の離れた長男と三男にはそこまで揉める理由がないんですよね。
そこで次男に話をじっくり聞いてみました。次男は優しいお兄ちゃんが大好きで独占したい気持ちがあるみたい。一方弟と組むときはお兄ちゃんの関心を引きたいことが理由のようでした。
なるほどぉ……魚などの動物はその集団の中で一番「弱い者」をいじめるけれど、おそらく人間が違う点は「好意」がいじめの引き金になることもあるということ。そういえばあのときの私も、年上のお姉さんの関心を引きたかったのかもしれない。私に砂をかけた子は、もしかしたら私が仲良くしている別の子ともっと仲良くなりたかったのかもしれない。
低学年の友だちトラブルは特にこのパターンが多いような気がするけれど、当然好きなら何をしてもいいってわけにはいきません。実際学校では長男も次男も「好きだから、優しいから」という理由で同級生からいじめを受けたこともあったわけで。そこでちょっと前から自戒も込めて「おうちを安心な場所にしようキャンペーン」を子どもたちに提案しています。
いじめの構造がわかったところで、今もこの先も「水槽」に入れられたら避けては通れないいじめ問題。さかなクンのおっしゃる通り水槽の中では完全な解決は難しいでしょう。
でも、だからこそ。
家庭という場所だけは、安心安全を確保したい。上で「最小の社会」と言いましたが、それよりもできればここにさえ帰ってきたら誰も阻害されない、いじめのない「シェルター」として、家庭は機能できるのでは。
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