それから半年間、家庭教師をつけて臨んだ猛勉強の結果、見事、青山学院中等部に合格した。
「実はぼく、補欠で1番だったんです。合格者欄に名前がなくてがっかりしていたら、補欠者の1番上に名前があった(笑)。その場ですぐに繰り上がり合格が決まって、地獄と天国をいっぺんに見たような気分でした」
■特別扱いはなし。友人との出会いは財産
入学後は芸能活動を再開したが、中学受験時の苦い思い出から「どんなに忙しくても、定期テストの勉強は1週間前から始める」というルールを自らに課した。
「芸能人だから成績が悪いと思われたくないというプライドもありました。だからいつもテストの点数はよかったですよ」と語る加藤さん。
出席や携帯電話持ち込みなどの特別扱いは一切なく、学校にいる間は一人の生徒としての時間を過ごすことができた。
受験勉強に縛られない中高の6年間は、趣味の読書や音楽への興味を深める時間にもなった。印象に残るのは、在校生がバンド演奏やダンスを披露する高等部恒例のイベント「ミュージックフェスティバル」。若者文化の中心地、渋谷という立地の影響もあり、当時すでにNEWSのメンバーだった加藤さんから見ても驚くような高いテクニックを持っている生徒も多かったという。
加藤さんが抱く青学生の印象は「協調性もあるけど、自立性もあってバランスがいい」。大学卒業までに得た多くの友人との出会いこそが、「青山学院で得た一番の財産」と語る。
文学賞を受賞した年には学校から招待を受け、久しぶりに中等部の校舎を訪れた。「ものすごくきれいになっていて、びっくりしましたよ! あんな素敵な校舎で学べる今の生徒たちが、うらやましいな」と笑う。
「小説を書くときに、学生時代に見た風景や思い出を設定に取り入れることはありますね。読んだ方から『青学っぽいね』って言われるのは、学校にそれだけはっきりした個性があるから。そんなところも、青山学院の魅力だと思います」
加藤シゲアキ(かとうしげあき)/1987年大阪府出身。中学受験を経て青山学院中等部・高等部・青山学院大学法学部卒。NEWSのメンバーとして活動しながら作家としても活躍、『オルタネート』(新潮社)は第42回吉川英治文学新人賞を受賞した。NEWS・29枚目のシングル「LOSER/三銃士」6月15日発売。
(木下昌子)
※AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2023』より
朝日新聞出版