警察庁の統計によると、2020年に小学生が誘拐された事件の認知件数は66件。不安な親御さんも多いのではないでしょうか。夏休みは親の目が届きにくくなるため、防犯教育を再確認しておきたいもの。危険なサインや防犯の方法について、日本こどもの安全教育総合研究所理事長の宮田美恵子さんに話を聞きました。現在発売中の『AERA with Kids 2022夏号』(朝日新聞出版)から一部抜粋してご紹介します。
【チェックリスト】「必要以上に近づいてくる」など8つの注意すべき行為* * *
「不審者に注意して」「知らない人に話しかけられても無視していい」。子どもを危険から守りたい一心で、こうした防犯教育をしている家庭や学校があります。でも、本当にこれでいいの? とモヤモヤを抱える親御さんもいるかもしれません。日本こどもの安全教育総合研究所理事長の宮田美恵子さんによると、こうした“人”に着目する防犯対策は、危険なサインを見逃す恐れがあるそうです。
「子どもを狙う人といっても、多くの場合、見た目はごく普通です。見た目で人を判断しようとすると、差別的な意識につながりかねません。また、子どもが犠牲になった事件で、元保護者会長が逮捕されたケースもありました。悪意があるかどうかを、人を見て判断することはできないのです」
日頃の学校教育や子育てとのギャップが、子どもを混乱させる要因になってしまうことも。
「本来、子どもはいろんな人とかかわりながら、コミュニケーション能力を身につけていきます。学校でも家庭でも『あいさつしよう』『困っている人がいたら助けよう』と教えますよね。それなのに、防犯のためなら『無視していい』と言われても、いざという時に適切な行動ができないことがあります。私は、そうした葛藤を『防犯モラルジレンマ』と名付けました」
では、どのような防犯対策をすればいいでしょうか。宮田さんは、相手の“行為”に着目することを提唱します。
■ 「お母さんがコロナ」と子どもをだます例も
「不自然な声をかけてくる、必要以上に近づいてくる、車に乗るように言ってくるなどは危険な行為です。不自然な声かけには『道に迷っているので案内してほしい』などと言って子どもを人けのないところに連れ出す『親切型』、『お母さんが新型コロナになったから病院に行こう』とだます『緊急型』など8パターンがあります。
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