■祖父母も含めた親子3代で取り組む
2023年3月末まで適用される「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」の存在は知っておくべきだろう。銀行や信託銀行などと契約を締結して専用口座を開設し、祖父母から教育資金の贈与を受けた場合、孫1人あたり最大1500万円までは非課税となる。前野さんは次のように補足する。
「祖父母が孫の教育費を必要な都度、必要な金額を払う場合は、年間110万円を超えても非課税です。制度をしっかりと理解して、祖父母も含めた親子3代で行う教育費の準備方法も有効な手段の一つです」
贈与税は1年間にもらう財産の合計が110万円を超えると納める必要があるが、原則、学費や教材費、文具費などの教育費にあてる贈与であれば、贈与税はかからない点も認識しておきたい。
教育に関するマネープランを組むうえで、前野さんは長期的なビジョンを提案する。
「費用の面で私立小学校への進学を見送っても、中学、高校進学では、子どもが『野球の強いあの学校に行きたい』『あの学校でブラスバンドをやりたい』と私学に意欲を示してくることもあります。その希望にすぐ『いいよ』と言ってあげられるように、小学校時代の6年間、または中学時代も含めた9年間で教育資金を準備しておきましょう。そのためにも、子どもの進路や学習費について親があらかじめ想定しておくことが大切になります」
中学進学以降であれば、各校による特待生制度、教育無償化を実現する高等学校等就学支援金制度、日本学生支援機構の奨学金などを利用することで、教育費の捻出方法の幅が広がる可能性もある。世帯主の年収が960万円未満の場合に支給される児童手当をすべて貯めると、中学卒業までに約200万円を計画的に積み立てることができる。また、所得税や住民税の軽減が見込めるiDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)での積み立ても効果を発揮する。
私立小学校の受験にあたり、前野さんはあらためて「親の覚悟と資金力が必要です」と力を込める。保護者には家計の現実をシビアに直視するとともに、わが子の未来を柔軟に見据えた的確な判断が求められる。
(『英語に強くなる小学校選び2023』より)
朝日新聞出版