相談者さん、「自分のものがまったくない社会」を想像することができますか? 血縁があるとかないとかも関係ありません。土地だって、自分のもの、他人のものという考えがない。しかし、それで、すべてがうまく機能しているのです。人間関係で言えば、妻の親も自分の親と同じように大事にし、近所のおばさんも自分の親と同じだと思って大事にするという感じです。助けなければならない人がいれば真心を尽くして助ける、助けられた人も自分が何かできるなら、真心を尽くしてやる。利害関係や私心私欲などが存在しない社会です。

 こういう理想郷を、我々は、思い浮かべることさえできません。「共産主義」「社会主義」など「◯◯主義」という思考法からすれば、矛盾だけしか見えなくなってしまうからです。それは、孔子の時代も同じでした。みじんでも人に「欲」があったら、そういう社会を想像することすらできないものなのです。相談者さんが義父母に対して腹立たしく感じるのは、当然で、仕方ないことです。

 さて、相談者さん、もしも妻が年間30万円もの大金を貯蓄の中から仕送りしていらっしゃるのが気になるのであれば、すぐにそのことをまず妻に話してください。そういう心のモヤモヤは、家族の将来に悪い影響を与えるかもしれません。息子さんたちの将来も考えて、いくらなら義理の親にお金を渡すことができるのか、話し合ってください。孔子は、人は仁愛に基づいて生きるために「知」が必要だと言っています。

 子曰(い)わく「里は仁を美(よ)しと為す。択(えら)んで仁に処(お)らずば、焉(いずく)んぞ知(ち)なるを得ん」(『論語』里仁第四)

「人への思いやりや、仁愛を行動のよりどころに置くことは美しい。『仁者』であろうと自身のあり方を選ばなければ、本当の知者にはなれない」という意味です。

 相談者さんは、まず夫婦の将来、息子さんたちの将来をどうしたら豊かなものにできるのかを第一に考え、そのうえで、どうしたら妻の両親にも仁愛の気持ちで接することができるか、知恵をしぼってください。

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