やる気のないわが子に火をつけるには、どんな言葉をかけたらよいのか。探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんは、新著『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)で、やる気の根源には「自己有用感」があるに説明する。大人が日常的に発する言葉の影響とは?
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■対話で育まれる自己有用感と自己肯定感
「子どものやる気を引き出すにはどんな声掛けをすればいいですか」
保護者から頻繁にいただく質問です。そもそも「やる気」とは何でしょう。私は、やる気の根源にあるのは「自己有用感」だと考えています。自己有用感とは、自分の存在が周囲に影響を与えていると信じられる感覚のことです。
たとえば、自分がいてもいなくても変わらない場所で1年間過ごすと想像してみてください。発言しても反応がない、意見を求められるわけでもない、そんな状況で自己有用感は育ちません。自分の存在が無力だと感じていれば「やる気」など出ないわけです。
この例をそのまま子どもの日常に当てはめてみれば、学校や塾の教室だけでなく、家庭内の環境が大いに自己有用感に影響することは想像できると思います。
「自己有用感」と似たもう少し一般的な言葉は「自己肯定感」でしょう。メディアや保護者とのやりとりの中でもこの言葉を日常的に聞くようになりました。
なぜそこまで自己肯定感への関心が高まっているかというと、2004年に長崎県で起きた小学生による殺傷事件が一つのきっかけだと言われています。中央教育審議会で事件の根底に加害児童の「自己肯定感の低さ」があったと議論され、その後のさまざまな国際調査で日本の子どもの自己肯定感が極端に低いことが指摘されるようになりました。その流れのなかで、教育改革2020のゴールの一つとして「子どもの自己肯定感を高めること」が盛り込まれました。
では、自己肯定感にはどのような環境や経験が影響するのか、調査を元に見てみましょう。『子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究』(国立青少年教育振興機構・2018年)によれば、20代~60代の男女5000人を対象とした調査で、「子どもの頃、家庭の教育的・経済的条件に恵まれなかった人でも、親や近所の人から褒められた経験が多かった人や、家族でスポーツしたり自然の中で遊んだこと、友だちと外遊びをしたことが多かった人は自己肯定感が高い」という傾向が現れました。
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