また、進学塾に入ってから暴言・暴力が増えるケースをよく耳にしますが、これはたいてい本人の気持ちに反して勉強をさせられるからです。

 中学受験を見据えて、ある進学塾に入った途端、家庭内での暴力が始まった子がいました。弟に暴力をふるい、ケガをさせてしまったのです。親御さんも手が付けられない状況になったという相談を受け、知窓学舎へ入塾してもらい、対話をはじめました。

 数か月後、彼の暴力は止んだと報告を受けました。もし、彼の暴力の原因が塾にあったのであれば、テストを繰り返して評価され、詰め込みや競争を続ける生活へのストレスが大きかったであろうことは想像に難くありません。

 もちろん、具体的な目標があってそのやり方を受け入れている場合や、そういう学習スタイルが好きなのならば問題ないですが、主体的になれなければ心身は疲弊します。大人なら自己責任で辞めることもできますが、子どもは辞めさせてもらうこともできず無理をし続けることで、人格形成にマイナスの影響が出ることも考えられます。

「うちの子、やる気がないんですがどうしたらよいでしょうか」という質問も多いですが、「そもそもなぜ本人にやる気がないことをやらせているのか?」「本当にそれは正しいのか?」ということにこそ疑問を持ってほしいのです。

 私が生徒たちに伝えたいことは、興味を持ったことを主体的に学ぶことで、さまざまな知識や能力を獲得して成長していくという、豊かな学びの世界観です。

「いつから受験勉強をさせるのがいいか」という質問への答えは「子どもが勉強に対して主体的になったときから」です。もちろん、小学生のうちにタイミングが来なければ、中学生になってから高校受験や他の選択肢を考えればいい。その時期を見極められるのは、他でもなく、子どものそばにいるお母さんお父さんではないでしょうか。

子どもが「学びたくなる」育て方  「話す・探す・やってみる」で生きる力を伸ばす

矢萩 邦彦

子どもが「学びたくなる」育て方  「話す・探す・やってみる」で生きる力を伸ばす
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矢萩邦彦
中学受験塾塾長 矢萩邦彦

やはぎ・くにひこ/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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