模試の結果や志望校選びで必ず目にする偏差値。一つの基準にはなるが、偏差値にとらわれすぎてわが子の学力を決めつけることはリスクがある。探究学習の第一人者で「知窓学舎」を運営する矢萩邦彦先生は、新著『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)で、偏差値の特性を正しく理解し、「脱偏差値」の考え方こそ必要と説く。偏差値の意味、そして模試の正しい使い方とは?
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■「脱偏差値」で考える
偏差値とは、あるテストを受けた集団の中で、自分がどれくらいの位置にいるかを表す数値です。50を基準として、平均からどれくらい差があるかを示します。自分の得点が平均点と同じなら、偏差値は50になります。
偏差値は、点数や順位に左右されずに、ある集団の中での自分の学力の位置を知ることができるのがメリットです。しかし、その集団の人数が少ない場合は、利用価値が低くなります。また、同じ集団が受けたテストの結果を比較するには有効ですが、異なる集団間では直接比べることができません。
こうした偏差値の特性をふまえたうえで、中学受験界をみてみましょう。
新タイプ入試などが増加し、中学の入試問題は多様化が進んでいます。共通のテストであればこそ利用価値のある偏差値は、年々その信憑性を下げていると言えます。多種多様な評価基準がある中で、一つの偏差値があらゆる学校に当てはまるはずがないのです。
模擬テスト一つとっても、たとえば主催者Aの模擬テストと、主催者Bの模擬テストでは、同じ学校でも偏差値が20くらい違うことが珍しくありません。また、同じ生徒が受けても、模擬テストによって偏差値は大きく変わります。
現状、多くの模擬テストは、私立難関校を基準にした出題傾向にあります。難関校に特化した偏差値になるため、難関校以外の学校を志望している場合、偏差値は指標として役に立たない可能性があります。
これからは、受験校によって模擬テストを変えることが今まで以上に意味を持つと思います。中学入試の多様化、模試での偏差値が示すものを考えると、偏差値でわが子の学力を決めつけることのリスクがわかるはずです。
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