そもそも、偏差値は、子どもの個性・興味・関心とはまったく関係がありません。計算問題や漢字の書き取り問題の正答率などを見るためには、偏差値が役立つこともありますが、あくまで一つの数値です。その子の成長度合いや学習の理解度、学校との相性や合否の確率などのすべてを表せる数字ではないのです。

 教育が「人と比べる」のではなく「個の力を伸ばす」ほうへ向かっていることからも、偏差値は明らかに人と比べるための数字ですから、健全な数字ではないように思います。

 中学受験を意味のある体験にしたいなら、まずは、偏差値にとらわれない覚悟が親子ともに必要です。子どもが知らなかったことを知った、以前はできなかった問題が解けるようになった、間違った問題を振り返って理解し納得できた。そういう成長ポイントに目を向ける感覚を養いましょう。

■模試の結果は偏差値「だけ」気にしなくていい

 探究型学習に目覚めたはずのお母さんが、中学受験を決めたとたん偏差値偏重主義に陥ることがあります。探究型がいいなあ、子どもの成長に注目したいなあと思っていても、「模試の結果」を見るとどうしても偏差値に目がいってしまうのです。

 模試を受けること自体には意味があります。自分の中で「できたと思ったのに間違っていた」「知らなかったことを知ることができた」「解きたくなる問題があった」と振り返ることができますし、自分と相性のいい問題を探ることもできます。「苦手だと思いこんでいたけれど、そうでもなかった」と発見できるかもしれません。

 こうした点をふまえれば、模試は自分のアップデートを実感するための機会になり、モチベーションを高めるためのツールにできます。

 つまり、偏差値だけが、モチベーションをダウンさせる要素なわけです。「なんとなく」ではなく、本心から「偏差値は重要ではない!」と親が思うことは、非常に大切なことだと思います。

子どもが「学びたくなる」育て方  「話す・探す・やってみる」で生きる力を伸ばす

矢萩 邦彦

子どもが「学びたくなる」育て方  「話す・探す・やってみる」で生きる力を伸ばす
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矢萩邦彦
中学受験塾塾長 矢萩邦彦

やはぎ・くにひこ/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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