安浪:なるほど。

矢萩:また、日本の人口は減少が続き、企業が即戦力になる中途採用や資格保有者を優遇するようになってきた。これにより人材の奪い合いになり、次世代を担う新しい人材の育成が必要になってきました。

安浪:そうですね。それで出た結論が、大学入試に知識や技能だけでなく、思考力、判断力、表現力を測る問題を入れていこうということですね。今はそれだけでも足りなくて、主体性、多様性、協働性も入れていきたいという流れになっています。

矢萩:もうひとつ、大学入試改革の理由のひとつに、日本の若者の自己肯定感の低さがあったんです。日本人は謙虚だから「自分はイケてる」ってあまり言わないからじゃないか、っていう専門家の分析もあったんですけど、それにしても他の先進国と比べて低い。何が問題なのか、ってなったとき、従来型の詰め込み教育がいけないんじゃないか、もっと主体性を持って学べる教育をしないといけないんじゃないか、と。

安浪:でも、大学受験でそれを求めるとなると、主体性をどうやって測るかという問題が出てきますよね。結局、ペーパーテストでは測れないから、就活と同じように自己アピールが必要になる。高校で生徒会をやった、部活をやった、ボランティアをやったとか。当然、みんな点をかせぐためにいろいろやろうとするだろうから、そうした活動がしやすい環境の充実した私学に行こう、という流れになりませんか。

矢萩:実際、今求められているような教育を突き詰めていくと、教育の本質が私学や民間の塾、そして家庭に移行している感じはありますね。現実問題、大学入試改革の具体的な中身が決まらない現在、公立の学校でこれに対応していくのはなかなか難しい。だから中学・高校での有用な学びの環境を得るために、今は詰め込み教育をしてでも中学受験をするしかない、というねじれた状況になってしまう。

安浪:私は大学教育改革のフォーラムに参加することも多いのですが、いろいろ話を聞いていると、だんだん親として腹が立ってくることもあって(笑)。今回の大学入試改革は例えば80年後の日本にも通用するものなのか、それとも10年ちょっとでまた変わるものなのか、と。もし国の方針でころころ変わるとしたら、それにいちいちわが子が影響されてたまるか、と。

次のページへ
1 2 3 4