この疑問に答えを出すため、スズメバチよけのスプレーを使って、飛んできたオオスズメバチが樹液場に降りられないようにした。すると半分以上のカブトムシが、少なくとも昼ぐらいまで樹液場にとどまって、樹液をなめ続けることが確かめられた。(図参照)

「カブトムシは、状況によっては明るくなっても活動を続けることがわかりました。夜が明けてから昼までの活動は、オオスズメバチに妨げられている可能性があります。それにより、カブトムシは本来の性質以上に夜行性が強いと見られていたのかもしれません。動物は自分の意思で、夜行性か昼行性を決めていると思われがちです。しかし、今回観察したカブトムシは、本当は昼まで樹液場で活動していたいのに、無理やり追い出されていたように思われます。競争者であるオオスズメバチの影響によって活動時間が変化しているという点に、私は強く興味をひかれました」

 ただし、今回の結果から直ちに、スズメバチがカブトムシより強いと言い切れるわけではない。

「こうした現象は特殊な環境・状況でしか起こらない可能性もあります。いくつかある仮説の一つは、今回観察した樹液場をつくったのがオオスズメバチだったというケースです。樹液場のできかたはさまざまですが、まれにオオスズメバチが大アゴで木をかじってつくることがあるんです。今回観察したのはそんな樹液場で、ハチが朝来てみたらカブトムシがいたので、これは許せないと力ずくで追い払ったのかもしれません」

 小島さんは今後、同じ現象がほかの場所でも起こっているのかどうか、どんな条件でこういう現象が起こるのかを詳しく調べたいと考えている。結びに、みんなへのメッセージも伝えておこう。

「身近なカブトムシにも、まだわかっていないことがたくさんあります。これまで正しいと思われてきたことが間違いだったということも珍しくありません。カブトムシの生態は、君たちの自由研究が新発見につながることもあるので、興味がわいたらぜひ、挑戦してみてください」

(取材・文/上浪春海)

『不思議だらけ カブトムシ図鑑』
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ジュニアエラ 2023年4月号

ジュニアエラ編集部

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