人を病の苦しみから救うための新薬を モデルナ・ジャパン代表取締役社長・鈴木蘭美

AERA「現代の肖像」

現代の肖像

2022/09/09 07:00

平日は東京で働き、週末は軽井沢の自宅で英気を養う。毎日7時間の睡眠をとり、睡眠データを記録している(写真=鈴木愛子)
平日は東京で働き、週末は軽井沢の自宅で英気を養う。毎日7時間の睡眠をとり、睡眠データを記録している(写真=鈴木愛子)

 モデルナ・ジャパン代表取締役社長、鈴木蘭美。新型コロナウイルスがまん延し、米モデルナはmRNAワクチンであっという間に世界に存在感を知らしめた。モデルナの日本法人が昨年設立され、鈴木蘭美が「モデルナ・ジャパン」の初代社長に就任、コロナの封じ込めに奔走する。もう一つ、鈴木の大きな夢は人類のがんの完治。長くイギリスで研究もしてきた。病の苦しみから人類を解放したいと願う。

【写真】鈴木さんの仕事風景や森に囲まれた軽井沢の自宅での様子など、続きはこちら

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 2021年秋、鈴木蘭美(すずきらみ)(49)は米製薬会社モデルナのチーフメディカルオフィサー、ポール・バートンから、こう打診された。

「モデルナが日本の拠点を開設して、トップを探している。君が社長にならないか?」

 鈴木は逡巡(しゅんじゅん)した。自身がスイスの製薬会社日本法人フェリング・ファーマのCEO代表取締役に就任して、1年足らずだったのだ。

 米モデルナは、「伝令リボ核酸(メッセンジャーRNA)」を使う新しいワクチン開発で世界の大手に躍り出た新興企業だ。新型コロナウイルスの遺伝子情報が公開されて、2日間でワクチン候補を設計。ワクチンや薬の開発には10~15年程度かかるといわれるが、同社は新型コロナウイルスワクチンの開発を始めて11カ月で完成させた。21年5月に日本で承認されたのを受け、国内でのワクチン開発と供給のために日本法人を設立した。

 1990年代から、マウスの実験などを通じて、世界の研究者がmRNAをワクチンとして医療に応用する可能性を示してきた。約30年の研究の蓄積があるワクチンだが、人の体に投与されてから長い月日は流れていない。鈴木はイギリスの大学でがんの基礎研究に従事していた科学者で、mRNA医薬の有効性について目を通した論文は、相当数に上る。

 モデルナは、感染症やがん、循環器疾患、希少疾患を対象とした治療薬やワクチンの研究開発を行い、「世界でひとつだけしかない、自分のための抗がん剤」の創出も構想。独自の開発手法を使えば、人類の歴史を塗り替えるに違いない──。

 鈴木はそう確信すると、がんの研究者だった夫のロバート・アラン・ハリス(55)とも相談して、打診から1カ月後に社長を引き受けると回答。11月、「モデルナ・ジャパン」の初代社長に就任した。

「私は、製薬業界での事業経験も18年ほどと長く、従来の薬の創り方のメリットもデメリットも知り尽くしています。『私がやらずして、誰がやる?』との思いで引き受けました」

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