全国の高校生と高等専門学校生が科学技術の自由研究を競う「JSEC2021(第19回高校生・高専生科学技術チャレンジ)」で文部科学大臣賞に輝いたのが、長崎県立長崎西高校生物部の石橋侑葉さんと古堅乃唯さんの「ハナアブのホバリング」に関する研究だ。ホバリングとは、飛びながら空中で静止すること。二人は、ハナアブ(写真1)という身近な昆虫がどのようにホバリングしているのか、観察と実験を重ね、新発見を成し遂げた! ジュニアエラ4月号ではこの研究に迫った。

MENU ●先輩たちの研究を受け継ぎ「翅基片」を動かす筋肉を見つけた! ●ハナアブの模型を使った実験装置で締め切り前日に新発見!

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●先輩たちの研究を受け継ぎ「翅基片」を動かす筋肉を見つけた!

 ホバリングする動物としては、ハチドリやクマバチが知られている。どちらも、前進するときは翅を斜めに傾けてはばたくが、ホバリングするときは翅を垂直に立て、水平方向に振るようにはばたいている。これに対して、ハナアブは前進するときもホバリングするときも、翅を斜めに傾けてはばたく。

 ハナアブが、翅を斜めに傾けたままホバリングできるのはなぜだろう? ハナアブの翅には、秘密があるのでは? そう思った生物部の石橋侑葉さんと古堅乃唯さんの先輩たちは、ハナアブの翅のつけ根近くに「翅基片」という小さな翅を見つけ、これがホバリングに関係しているのではないかと考えた。しかし、どのようにホバリングに役立っているかまではわからなかった。

 先輩の研究を受け継いだ石橋さんたちは、ハナアブの飛び方を観察するところからスタートして、前進やホバリングするときのはばたきの角度を確かめた。さらに、ハナアブを解剖して、「翅基片」を光学顕微鏡や電子顕微鏡を使って調べた。体長10ミリメートル程度のハナアブを、顕微鏡をのぞきながら解剖するのは、慣れない二人にとっては至難の業だったが、失敗を重ねながら腕をみがいて解剖に成功し、重要な発見にたどりついた。ハナアブには、翅をはばたかせる筋肉とは別に、翅基片を動かす筋肉があることを突き止めたのだ。そして、この筋肉は、翅基片を立ち上がらせて角度を変えるためのものであり、その角度によってホバリングが可能になるのではないかと推測した。

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上浪春海
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