SNSの誹謗中傷やコロナ差別、不登校児童生徒数の増加……。知識や学力だけでは太刀打ちできない時代に大切な「四つの力」とは? 「AERA with Kids冬号」では、大阪市立大空小学校初代校長の木村泰子さんに、多様な仲間とともに過ごす小学生時代にこそ育まれる力についてうかがいました。

MENU ■「わかった?」と聞けばシーン ■全国1位の県を上回ることも

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「すべての子どもの学習権を保障する」を指針に2006年に開校した大阪市立大空小学校。初代校長を務めた木村泰子さんは、発達障害がある子や不登校だった子など、「困りごと」を抱えた子もクラスを分けずに、みんな一緒に学び合うことを大切にしてきたと言います。

「みんな同じがいい時代から、一人ひとり違うことが当たり前の時代になってきました。コロナもですが今後は“想定外”のことが起きる時代。数値で見える学力だけでは乗り越えられない。違いを認めていかに共生できるかが、未来を生き抜く鍵になります」

 大空小学校では、木村さんが在籍中の9年間不登校児ゼロ。その理由を木村さんは「自分がされて嫌なことは人にしないという約束を徹底しただけ」と言います。

「困っている子を除外しない。大人が上から目線で正解を押し付けない。これを守れば、子どもは必ず、自分で考え、相手の立場に立って友達を大切にする子に育ちます。トラブルを起こしても、そこからどうやり直すか。柔軟性が鍛えられるんです」

■「わかった?」と聞けばシーン

 木村さんは子ども一人ひとりを100%尊重するために、45年間の教職人生をかけて「あなたはどう思う? 考えを聞かせて」と問いかけ続けてきました。

「最初はわからないとだけ答えていた子も、大人が耳を傾けさえすれば、必ず自分の意見を表現してくれるようになります。算数の授業で1時間かけて1問を解いたこともありました。授業中も先生が『わかった?』と聞けばシーンとするけど、『わからないところはどこ?』と聞けば、一斉に教えてくれますよ(笑)。そこからまた考えればいいんです」

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玉居子泰子
玉居子泰子

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