小川先生によると、没頭中の子どもの言動には、3つの特徴的なパターンがあるといいます。それは、人が情報を得るときに「どの感覚が優位になるか」によって変わる観察法。私たちは視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚といった「五感」を使って生活していますが、「人によってどの感覚からの情報に反応しやすいかは、それぞれ違う」と小川先生は話します。それは脳のクセのようなもので「視覚優位型」「聴覚優位型」「身体感覚優位型」の3タイプに分けられるそう。

 それでは、3つのタイプを詳しく見てみましょう。

<視覚優位タイプ>

目から入ってきた情報(視覚)に意識が向きやすいのが特徴。見えるものに次々と反応するので、意識も話もあちこち飛ぶことが多い。情報を記憶するときは映像で覚え、絵や写真、図形やグラフなど視覚に訴えるものからの理解が得意。言葉でこと細かに説明されるのを聞き続けることは苦手。(例)海に行ったとき、空の色や波の様子などが記憶に残るタイプ。

<聴覚優位タイプ>

音、人の言葉など耳から入ってきた情報(聴覚)に反応しやすいのが特徴。言葉で覚える、暗記することが得意で、人の表情よりも言葉を覚えている。「見る・読む学習」より「聞く学習」になじみやすい。マイペースでコツコツ努力型。全体的に見るより、細部にこだわりやすい。(例)海に行ったとき、波の音や人のざわめきなどが記憶に残るタイプ。

<身体感覚優位タイプ>

触覚や嗅覚など皮膚感覚を通した情報に反応しやすいのが特徴。見たもの聞いたものより、その場の雰囲気や感じ方を記憶しやすい。スポーツや体を動かすのが好きでリズム感がある。身ぶり手ぶりで話すことが多い。言葉になる前に感情が膨らんでしまうことが多く、言葉で説明するのは苦手。(例)海に行ったとき、砂浜の質感や海水の感触などが記憶に残るタイプ。

 この三つのタイプを知っていれば、子どもの不可解な熱中行動も、例えば“この子は視覚優位型だからこんなことするんだな”と腑に落ちやすくなります。自分と子どもの優位タイプが違うときも納得しやすいでしょう。「ただ、どれか一つのタイプだけで100%ということはないし、どのタイプが優れているということでもありません。あくまで子どもの個性を知る一つのガイド。“この子は○○型”と決めつけないように注意して」と小川先生はアドバイスします。

(取材・文=船木麻里)

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船木麻里
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