さっぽろ雪まつりは春節に近い時期に行われていることもあって、例年は中国からの観光客も多い。国籍別の集計はないが、今年の来場者数は前年比26%減で、「残念な結果」(同)と振り返る。日本政府観光局によると、19年に日本を訪れた外国人の観光客数は3188万人で、このうち959万人が中国からの旅行者。全体のおよそ3分の1を占めていた。

 中国人旅行者減の影響が大きいのは、日本以外でも同じだ。

 ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎上席研究員は、中国人観光客の減少による支出減少は全世界で約12兆円、日本で約7千億円と試算する。

 03年に中国から世界に出て行った旅行者は2022万人だったが、18年には1億6199万人と、約8倍に増えている。中国からの海外旅行者の支出をみると、05年に218億ドルだったのが、18年に2773億ドルと、これもまた13倍近くに増えている。

「新型肺炎問題が観光産業に与える影響を考えるうえでは、SARS(重症急性呼吸器症候群)の感染が広がった03年当時に比べ、中国からの旅行者の影響力が格段に増している中で起きたことをまず理解しなければなりません」

 そのSARSの流行の際、03年の第2四半期(4‐6月期)で海外旅行者の支出が4割ほど減ったという。今回に当てはめると、世界全体で約12兆円、名目GDPのシェアから推計すると日本で7千億円ほど減少するとみられるという。

 百貨店の売り上げでも、衝撃的なデータが出始めている。

 高島屋では、2月1~13日の食品などを除く免税対象商品の売上高(国内17店舗)が前年比60.4%減だった。春節期間中の1週間だけを前年の春節期間と比較すると、免税売上高(同)で14.7%減だという。今年の春節は1月24日に始まったが、同27日に中国政府が団体旅行を禁止したことなどが影響した。

 広報担当者によると、免税対象の売り上げのうち約8割は中国の人による売り上げが占めているといい、「今後の見通しすら出すことができない状況です」と頭を抱える。

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