自分に自信が持てなかったのは、親との関係が大きかったと思います。

 僕は3人兄弟の2番目なのですが、家が武士の家系だったためか、しつけが厳しかった。小さいころは「お父様」「お母様」と呼ばされていましたし、長男をたてるのが当たり前でした。兄とは年子で、兄がそうしたように、僕も中学受験の勉強を4年生から始めました。成績が良かった兄が合格しなかった一方で、僕は希望していた東京の男子校に受かりました。今でも覚えているのですが、自分の合格発表があった日、母が僕のところに来て「お兄ちゃんが傷つくから、受かったことを話題にするのはやめよう。お祝いするのはやめようね」と言ったのです。ショックでした。だって、3年間、死に物狂いで勉強しましたからね。いくら兄貴が落ちたとはいえ、それとは関係なく祝ってほしかった。このことは、自分の今の教育方針や子どもとの向き合い方に、大きな影響を与えています。僕には息子が2人いるのですが、それぞれをしっかり見て、褒めるようにしているのは、この経験があったからです。

 学校生活は楽しかったのですが、ちょっとやんちゃがすぎて、ある傷害事件に関わることになりました。16歳、高校2年生のときのことです。それが警察沙汰になり、学校に連絡が入り、親が呼び出される事態になりました。そこで突然「自主退学」を突きつけられました。その時は、人生の終わりだと思いましたね(笑)。これまで進んで来たレールから、いきなり外されてしまったからです。そのときの僕は、親が示していた「勉強していい学校に行き、いい会社に入る」というレールの上を走る以外の選択肢を持ち合わせていませんでしたから。

 そんなひどく落ち込んでいたときに出合ったのが、レゲエ音楽です。大人に認めてもらえない自分の中に溜まったモヤモヤを、音楽で表現することができるようになったのです。それまでは、大人に対する「今に見ていろ」という感情を、反発だったり、抵抗だったりというマイナスの形でしか表すことができませんでしたが、言葉を音楽に乗せて表現することができるようになりました。ぼくら湘南乃風の歌詞の根本に、大人に媚びない姿勢と、若者を認めてあげたいという気持ちやエネルギーを含んでいるのは、そのためなのです。

●大人になっても、人は変われる。親になってわかったこと

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