子どもができて、さらに自分が大きく変わることになりました。

 当初、妻の息子への態度に、正直「こんなに甘やかしていいのか!」と感じていました。とにかく息子を抱きしめ、息子を褒めるからです。悲しいことに僕の頭の中には、「褒めすぎると、調子にのるんじゃないかな」という思いがありました。そう言うと妻は、「いいじゃん。喜んでいるんだから褒めてあげようよ」と。同じことなのに、全然違う角度で見ていると気がついたのです。

 それからは、自分がそう思えるように変わろうとしてきました。僕は親に抱きしめられた記憶もありませんから、そんなにいきなり愛情たっぷりの接し方はできませんでしたが、それでも日々心がけていれば、身についてきます。もちろん、悔しいと思うくらい、子育てのシーンの中で「昔の自分」が顔を出し、影響することもあります。自分の瞬時の選択に、「あっ、そっちだったか。こっちじゃなかったか……」みたいな(笑)。そんなときは体につけた矯正器具が発動して、「そっちじゃないよ」と教えてもらっているような感覚です。それを子どもが生まれてからずっとしていますから、だんだんその矯正器具も必要なくなってきたかな。大丈夫、大人になっても、人はちゃんと変われるんです。

(取材・文/黒坂真由子)

※「AERA with Kids 秋号」より抜粋

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2019年 秋号 [雑誌]

安浪京子,高濱正伸,tomekko

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AERA編集部
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