いま、クジラをめぐって世界が捕鯨派と反捕鯨派に割れている。どういうことなのだろう? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。

調査捕鯨で捕獲されたミンククジラ(2017年6月、北海道網走市) (c)朝日新聞社
調査捕鯨で捕獲されたミンククジラ(2017年6月、北海道網走市) (c)朝日新聞社

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 ホエールウォッチングの船に寄り添って泳ぐ体長十数メートルのセミクジラを見たことがある。黒く光る巨大な背中は潜水艦のようだった。

 クジラは地球上で最も大きな動物だ。シロナガスクジラ、マッコウクジラ……。こんな壮大な生物が、絶滅もせずに、よくぞ残っていると思う。

 いま、クジラをめぐって世界が捕鯨派と反捕鯨派に割れている。国でいえば捕鯨派は、日本やノルウェー、アイスランドなど。「十分な数がいれば食料資源として利用できる」「捕って食べることも認めよ」という。

 反捕鯨派はヨーロッパ各国、アメリカ、オーストラリアなど。「貴重な野生動物なので保護しよう」「いまはクジラまで食べる必要はないだろう」という意見だ。

 両派は国際捕鯨委員会(IWC)で論争していたが、日本は昨年12月に突然、IWCからの脱退と商業捕鯨の再開を宣言した。海外では、日本大使館などに「日本は捕鯨をやめろ」という抗議デモも起き、対立が深まっている。

 IWCは1948年に設立。「保護と資源利用の両立」をめざしたが失敗し、クジラは急減した。最大のシロナガスクジラは絶滅の一歩手前までいった。IWCは82年、商業捕鯨の一時停止を決め、いまも続いている。時代とともに捕鯨をやめる国が増えたからだ。

 現状の捕鯨に関する対立は感情的かつ不毛なもので、将来、国際社会がきちんと解決すべき問題だ。その場合、自国政府の立場に引きずられず、一人ひとりが世界市民として「自分はどう思うか」を考えることが重要だ。また日本では「鯨食は日本の食文化」という意見もあるが、それは一部の地域であって、広く食べられたのは第2次大戦後の食糧難の一時期だけということも知っておこう。

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AERA編集部
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