ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 大騒ぎした米朝首脳会談は予想通り何もなしとなりました。その場で決めようという意識が強く、事務レベルで煮詰まっていなくてもお構いなしに動くトランプらしい結末でしょう。日本では大きな紙面を割いたようですが、アメリカではこの記事はほとんど取り上げられませんでした。

 というのも、同じタイミングでトランプ大統領の元個人弁護士マイケル・コーエンの議会証言が7時間以上にわたりライブ中継され、米国中が釘付けになりました。当然メディアの報道もコーエン一色になり、米朝首脳会談はもとより、同日に開催されたライトハイザーUSTR代表とパウエルFRB議長の議会証言もかすむほどでした。

 中でも秀逸だったのが、コーエンのこの発言です。

「I am ashamed because I know what Mr. Trump is.He is a racist. He is a conman. He is a cheat.」

 私はこれを「奴は人種差別者で、詐欺師で、とんでもないインチキ野郎だ!!」と訳しました。いくら何でも昔の同僚、同志に対してここまで言うか、というほどひどい発言ですが、米国のエリートたち、特にコーエンのような弁護士は、法廷に立って陪審員をたきつけたり、強烈な印象を与えたりするのが重要な職務なので、相手の足を徹底的に引っ張るときの表現の豊かさにはすごいものがあるのです。平易な言葉で相手の弱点や核心を突きまくるわけですね。

He is a racist.
He is a conman.
He is a cheat.

 文体が揃い、4語目は子音のあとがエイ、ォ、イーときれいに母音が並び、絶対忘れない作りになっていますね。

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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