仮想通貨で事業への出資を募る「ICO」という手法が注目されている。ただ現行法では規制が及ばず、犯罪の温床になっているとの指摘もある。
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「出資すれば高配当が得られます」
11月14日、そんな甘い文句で実体の無い会社への出資を募っていた東京都港区白金台3丁目、会社役員柴田千成(かずなり)容疑者(46)ら8人が逮捕された。直接の容疑は、東京都の女性(72)ら40~72歳の男女9人から現金計2900万円を無登録で集めたことだ。警視庁は、柴田容疑者らが約6千人から現金計約5億円を集めていたとみている。
これだけでも大金だが、犯行グループは現金以外に仮想通貨を78億円だまし取っていたとみられる。そしてこの仮想通貨については、犯行グループが罪に問われない可能性があるという。一体なぜなのか。
柴田容疑者らの逮捕容疑は、「詐欺」ではなく、「金融商品取引法(金商法)違反」だった。一般に、詐欺罪を適用するには犯人が故意にだましたことを立証しなくてはならず、ハードルが高い。こうした「出資詐欺」と呼ばれる事件で広く適用されるのが、無登録での出資募集などを規制する金商法だ。
ところが、金商法が規制しているのは「金銭」「有価証券」等による出資だけ。ビットコインなどの仮想通貨での出資は想定外なのだ。仮想通貨に詳しい河合健弁護士は言う。
「出資の全てを仮想通貨で集めていたら、金商法違反には問えなかった可能性が高い」
容疑者グループもそこを狙ったとみられるが、一部を現金で受け入れたことから、何とか金商法でからめ捕れた格好だ。
仮想通貨で新規事業への出資を募る手法は「ICO」と呼ばれ、世界的に注目されている。
金融庁の資料によると、2017年には約55億ドル(約6200億円)、18年は1~7月だけですでに約143億ドル(約1.6兆円)がICOによって世界で調達された。日本でも、ICOに成功し、事業を始めたベンチャー企業が出ている。