国会前の車道を埋め尽くす安保関連法案反対デモ。手には思い思いのプラカードが(9月14日) (c)朝日新聞社
国会前の車道を埋め尽くす安保関連法案反対デモ。手には思い思いのプラカードが(9月14日) (c)朝日新聞社

 安保関連法案反対運動が大きく盛り上がったこの夏。初めての集会、初めてのデモ。そんななか、「新左翼」「運動」といった耳慣れぬ言葉を耳にした人も多いだろう。新左翼って、どういう人たちなんだろう。歴史を振り返って解説する。

 8月30日、国会前で「戦争法案廃案! 安倍政権退陣! 8.30国会包囲行動」と銘打った集会が開かれた。ここで、もはや歴史の後方に追いやられたと思われた「新左翼」に出合えた。1960年代学生運動の原風景がほんのすこしうかがえるが、当時と違うのは、ヘルメットに角材(または鉄パイプ)といういでたちではないこと、機動隊とぶつからないこと、活動家が高齢化していることだ。学生運動に参加した団塊の世代たちは、大学卒業後、おおむね一般社会人の道を歩んでいる。かつての活動家の面影は消え、一見するとどこにでもいる日曜日のお父さんの風情である。
 
 60年代に学生だったいまの60代半ば以上にとっては、「まだ中核派、革マル派がいたのか」という驚きがあるだろうし、40代以下の人にすれば、新左翼といわれてもまるでピンと来ないだろう。彼らが学生時代を過ごした90年代には、身近に活動家は存在しなかった。すでにキャンパスは静かで立て看板もちらほら散見されるばかり。デモに遭遇することもほとんどなかっただろう。

 そもそも新左翼、極左、過激派とは何なのか。ときにツイッターで「○○は中核派と関係がある」などというツイートが流れてくることがあるが、「中核派」って何だ?と思う人も、少なくないはずだ。

 新左翼とは、60年代に既成の左翼政党を否定して世界各国で同時的に現れてきた学生や若者を主体とした左翼運動の総称だ。トロツキー、毛沢東、ゲバラなどの思想の影響を受け、カウンター・カルチャーとも連動して発展した。

 日本の新左翼には、いくつかの流れがある。まずは58年に日本共産党から飛び出した共産主義者同盟(共産同、ブント)。60年安保闘争のとき最前列でデモ隊を組み、国会に突っ込んだ。

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