高齢者に牙をむく!「子どもの貧困」の実態 先鋭化する特殊詐欺の風景 (2/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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高齢者に牙をむく!「子どもの貧困」の実態 先鋭化する特殊詐欺の風景

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ルポライター・鈴木大介AERA#出産と子育て#貧困
illustration/神谷幸宏

illustration/神谷幸宏

 同級生からイジメを受けるようなことはなかったが、明らかに浮いていたという自覚はある。

「お前んとこは自由でいいな」と言われることもあったが、小学生にとって一人きりの夜は長かった。兄弟でもいればまだしも、一人でゲームを続けるのは寂しいというより、飽きるし、腹は減るし、退屈だった。

●家族より一緒にいる

 そんなある夜、万引きでもするかと夜中にブラブラしていたところ、自販機前の明かりにたむろする隣の学区の小中学生と行き合ったのだという。小学5年生の時のことだった。

 全員が喫煙をしており、初めは「狩られる」と思った。案の定絡まれた結果、「なにお前、チャリ(自転車)乗れないの? じゃあ教えてやるよ」という話になった。実はその年まで自転車の乗り方を教わったこともなく、自分の自転車も持っていなかった。ほんの数時間で自転車に乗れるようになり、さらにその夜に無施錠の自転車を窃盗。なぜか全員で隣町まで自転車で遠征し、集団万引きをしたのだという。

 毎日つるんで遊ぶのは、8人のグループ。M君より年下もいれば、既に中学校に上がっている先輩もいたが、それぞれの家のことなども自由に話した。服を買ってもらえない子。週に1度しか親が家に帰ってこない子。電気代を滞納しがちで、年じゅう家が暗闇という子。家に帰ると殴られるという理由で、小学校4年生の頃から家出をしては連れ戻されて殴られるという子もいた。

 毎日の500円があっただけで「まだうちはマシだったんだ」とM君は思ったという。

「自分自身の家もなんかヤバいって感じはしてたけど、普通の家の同級生にそんな話できない。けどその友だちになら普通に話せた。友だち……っていうより兄弟ができた!って感じですね。中学3年生までは毎日そいつらとつるんでたから、実際家族とかより一緒にいる時間長かったし」

●富める者への敵意

 中学時代は、その「週に1度しか親が帰らない」友人宅に5人ほどで住み込み、自販機を破壊しての釣銭窃盗、海水浴場の駐車場で車上荒らし、スクーター盗とやりたい放題をした。中学卒業後は「高校行けなかった組」でつるみ、いつしか近隣の同じような境遇の少年のつながりで数十人規模のグループになっていた。

 仲間内には、ヤクザになった者、ホストになった者、バンドをやっている者、そして詐欺に従事している者。そんなつながりから今回の詐欺のリクルートを受けているM君だが、話を受けるかどうかはまだ五分五分だ。

「ウケはハイリスクなバイトですけど、モシモシ(プレーヤー)は一回やると、目つきからして変わっちゃうんですよ。結局、俺らみたいにガキの頃から荒ぶってなくても、高校行けたヤツも、大学まで上がったヤツも、稼いでるとか努力が報われたとかの話は全然聞かない中で、詐欺周りのヤツだけがダントツで羽振りいい。それで『詐欺は頑張ったら頑張っただけ結果がある。捕まったらロング(長期刑)食らうけど、そのリスク込みで1年で一生分稼ぐ』とか真顔で言うんで。ちょっとカッコイイと思う半面で、意識高すぎで痛い感じもするし、『俺たちはお前らとは違う』って感じが鼻につくときもある。俺だって金持ってのうのうと暮らしてるジジイババアについては、こいつら金持ってても使い切んねーだろうから取っちゃってもいいんじゃね?って思うけど、やるならやるで本気で腹据えて取れる限り取り尽くすぐらいで行く。じゃないと、その先輩にも簡単には返事できない感じなんです」


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