岸田文雄前政調会長 (撮影/東川哲也)
岸田文雄前政調会長 (撮影/東川哲也)

 総裁選にまっ先に手を挙げた岸田文雄前政調会長が、本誌の直撃取材に激白。目指す国家像とは。安倍・菅政権の“負の遺産”をどう清算するのか。

【アンケート結果】テレビを見ていて信用できないと思う人1位は?

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──菅首相が総裁選不出馬を表明する前から立候補を表明していましたが、「菅政権ではダメだ」と考えていたのですか。

 新型コロナウイルス対策という難しい問題に、菅首相は1年間頑張ってこられました。ワクチン接種もその一つです。

 ただ、課題が二つありました。一つは、コロナ対策では、なんとしても国民の協力を得なければならない。そのために、ていねいな説明による国民の「納得感」が必須です。「政府で検討した結果、こうします」ではなく、決定に至るプロセスも説明する。国民に寄り添う姿勢が必要でした。

 もう一つは、「たぶん、これでいけるだろう」という見込みで危機管理をしていたことは、いかがなものだったかなと。危機管理の要諦(ようてい)は、最悪の事態を想定すること。国民から「後手後手に回っている」という印象を持たれないよう、最悪の事態を想定して物事を進めていく。そして信頼感を得られるように努力することが大切だと思います。

──菅首相は、それができなかったと。

 出馬表明の時も、私は国民の声をしっかり聞くことを申し上げました。そこは、私の思いを見てもらって、「みんなで考えましょう」ということです。

──経済政策で「新自由主義的政策からの転換」を公約に掲げています。

 これまでの新自由主義的な政策、あるいは効率・利益優先の市場原理による経済によって、日本では格差が拡大しました。そこにコロナが追い打ちをかけた。感染症対策の医療態勢は脆弱(ぜいじゃく)で、非正規雇用の方が仕事を失った。規制改革・構造改革だけでは人は幸せになれないことが、あらためてわかりました。

 経済成長は大事ですが、その果実が広く国民に分配されなければ格差は広がるばかりです。富裕層が豊かになれば、やがて貧しい人にも富がこぼれ落ちるという「トリクルダウン」は、この20年間で起きませんでした。

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