まずは大賞の「ONE TEAM」について。

「ラグビー日本代表チームの長年のがんばりが凝縮された、とてもいい言葉が大賞に選ばれたと思います。“みんなは一人のため 一人はみんなのため”というラグビーの精神を表す言葉。そのまま、ラグビー代表の皆さんが使うぶんには素晴らしいのですが、これを一般社会に置き換えたとき、たとえば会社で『われわれはONE TEAMなんだから』とか、同調圧力が強いられ無理をさせることも出てくる可能性はあります(笑)。使い方によっていろんな顔を持つ言葉ともいえますね」

 石原さんが他に注目したトップ10入りした言葉についてこう語った。

「『軽減税率』と『〇〇ペイ』によって、消費増税があった年だったんだなと振り返ることはできそうですね。さらに『闇営業』は、業界でこれまでにもあった言葉に新たなニュアンスが加わった。そういった意味では新語・流行語にふさわしい言葉といえるのかなと思いますね」

 さらに、「#KuToo」が選ばれたことにも注目する。

「議論が分かれる言葉ですが、言葉が注目され、そこから議論され、始まることがあったり変わることがでてくる。そういう意味ではとてもいい言葉ですね」

 今回トップ10入りしなかった言葉の中で気になるのが小泉進次郎環境相の「ポエム」だと石原さんは言う。

「非常にはやりましたが、このところの進次郎さんの失速感が、トップ10入りしなかった理由の一つかもしれません。もっと選出時期が遅かったら、『桜を見る会』が入っていたかもしれません。これは、現在の問題が収束したとしても、来年の花見のシーズンに、『来週わが社の“桜を見る会”をやります』とか、別のかたちで定着することもあるかもしれませんね(笑)」

 2020年は、なんといっても東京五輪という大きなイベントを控えた年である。

「昨年は冬季五輪の『そだねー』、今年はラグビーワールドカップの『ONE TEAM』と、2年連続スポーツ関連の言葉が大賞に輝きました。価値観の多様性が広がるいま、多くの人が一つになって注目し、盛り上がれるのは、結局スポーツくらいだからという部分がある気がします。来年も東京五輪関連の言葉が選ばれる可能性が高そうですが、みんながのんきに明るくなれるような言葉がもっと流行してほしいですね」(石原さん)

 来年はどんな言葉が巷(ちまた)をにぎわせるだろう。
(本誌・太田サトル)

※週刊朝日オンライン限定記事