フクイチ作業員を見殺しにした東電の怠慢

原発

2012/09/12 07:00

 8月22日、福島第一原発(フクイチ)内の休憩室で、男性作業員(57)が死亡した。この死の真相をめぐり、フクイチ内では、東電への不満が高まっている。作業員は言う。
「東電よ、オレたちを見殺しにするのか」----。
 亡くなった日立の下請け作業員はこの日、午前9時から作業を始め、9時50分に厚生棟(西門付近にある休憩室)で休憩中に体調不良を訴え、横になって休んでいた。同僚たちが仕事に戻った後の10時35分ごろ、意識不明の状態になっていたのを発見され、厚生棟の係員が10時43分、フクイチ内のER(救急医療室)に連絡をした。
 ここからが問題である。現場責任者は当時の状況をこう説明する。
「構内の日立休憩所から駆けつけた担当者が自動体外式除細動器(AED)を使うと、脈が戻りました。もうだいじょうぶと胸をなでおろしたんです」
 亡くなった作業員は、一度は“蘇生”したにもかかわらず、死を防ぐことができなかった。
 現場責任者は続ける。「医師が来るまで20分以上が経過し、その間に容体が急変しました」。
 ERの事務所から厚生棟までは、約800メートル。車で駆けつければ2~3分の距離だ。亡くなった作業員は横になっているときに、大きないびきをかいていたことから、脳梗塞などの疑いがあり、大至急対応する必要があった。
 東電は「対応に問題はなかった」の一点張りで、医師の到着が遅れた理由について、現場に対する説明はないままだ。
 東電の硬直化した組織と危機意識の薄さは、事故後も不変だ。収束作業にあたる作業員の死は、これで5人目となった。

※週刊朝日 2012年9月21日号

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