第33回 振付師・竹中夏海さんインタビュー パート3 <《ENJOY!! ENJO(Y)!!》は、「四羽の白鳥」のイメージなんです>

文・原田和典

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竹中夏海さん

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アップアップガールズ(仮)「富士山 山頂頂上決戦(仮)」 登山、富士山頂での熱唱、下山を収めた感動のドキュメンタリーDVD

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アップアップガールズ(仮)「サードアルバム(仮) 初回限定盤」 ※3月17日発売。初回限定盤は伝説のノンストップ・ライヴ「ハイスパートキングダム」最終日、名古屋公演の模様を約2時間収めたDVDつき

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 今月も引き続き、振付師の竹中夏海さんへのインタビューをお届けしたい。これまでPASSPO☆、アップアップガールズ(仮)、夢みるアドレセンス、南波志帆、寺嶋由芙、虹のコンキスタドール、predia、セクシー☆オールシスターズ、6代目ミスマリンちゃん、ミスiD、小桃音まい、HKT48、大森靖子、藤井隆・椿鬼奴・レイザーラモンRGのユニット“Like a Record round! round! round!”等の振り付けを担当。いきものがかりやチームしゃちほこ等のMV、さらにCM、テレビ、ステージの演出にも携わっている。多方面で才能を発揮する竹中さんが語る、アイドルの魅力とは。

――アップアップガールズ(仮)との出会いは?

竹中  2011年ですね。アプガにまだオリジナル曲がなくて、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)の曲を歌ってた頃です。私が初めて関わったのは汐留AXで行なわれた「アップアップガールズ(仮)黒船LIVE」というステージです。(アプガが所属している)事務所が、外部のひとを起用しようというときに、まだPASSPO☆(当時の表記は、ぱすぽ☆)の振付師というイメージが強かった私に声をかけてくださった。私はハロヲタ(=ハロー!プロジェクトの大ファン)だから嬉しかったですね。“ハロー好きの人が考えたハロプロ・カヴァー・セレクション”みたいな感じでやらせてもらったのが最初です。でも私が考えたのはセットリストと衣装ぐらいで、振り起こしはメンバーが全部自分たちでしました。アプガはハローのどの曲もできるので、私の好きなハローの曲をワーッと選んだ記憶があります。「夢フィフ」(スマイレージの《夢見る15歳》)、DEF.DIVAの《好きすぎてバカみたい》、モーニング娘。の《リゾナント ブルー》とか。冬にはクリスマス・ソング縛りをやったり、そのあとは春ソング縛りもやりましたね。

――初対面当時のアプガの印象は?

竹中 PASSPO☆と全然違う、何もかも違う(笑)。良くも悪くも本当にすごい対極にいると思いました。アプガは基礎がすごいしっかりしている。でも、バックダンサーぐせがすごくついていたんです。PASSPO☆ってどんなにへたくそでも最初から自分たちのライヴをやってたけど、それに対してアプガはずっと(主役のシンガーの)バックだった子たちだから。最初の頃はワンマンライヴを見てても、「これ、誰のステージなんだっけ?」ってちょっと思っちゃうようなところがありましたね。今は本当に自分たちのステージをしているけど、最初の頃は「前へ前へ、私たちが」という強さがなかった。おりこうさんというか。あと、これは今でもですけど、フリーが苦手。

――そうですか!

竹中 PASSPO☆は逆にはフリーしかできない(笑)。台本通りとか本当にへたくそで、「こういうふうにやってごらん」と言うと急にぎこちなくなるんですけど、「自由にやりな」って言ったらウワーッって(勢いが出る)。アプガに「自由にやりな」と言うと固まっちゃって、「なんでもいいから(振りを)つけてください」ってなるんですけど、ただ「やれ」といったことは絶対にちゃんとやる。面白いんです、違いが。

――2012年春にアプガは初のオリジナル曲《Going my ↑》を出します。竹中さんは最初の著書『IDOL DANCE!!!: 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい』で、Berryz工房の《付き合ってるのに片思い》をテレビで見て感激したことがアイドルの振り付けを志すことにつながった、と書いていました。初めてアプガのオリジナル曲に振りを付けるときに、同じ人数であるベリを意識しましたか?

竹中 ベリは特殊部隊じゃないですか。私は「アベンジャーズ」と言っているんですけど、意識してもしょうがない。それよりは、「背の高い子ふたり、ちっちゃい子が3人、中くらいがふたり」というバランスを生かして、奇数として並びをきれいにしたいなと考えましたね。

――以来、現在まで多くのアプガ楽曲に振りをつけていらっしゃいますが、それに関して音楽プロデューサーのmichitomoさんや、マネージャーさんから指示を受けることはありますか?

竹中  マネージャーさんとは打ち合わせもするし、振り付けをつくる前にイメージをメモでいただくこともありますね。michitomoさんから前もって指定されたことはないんですけど、あとから「あそこはイメージどおりでした」「あそこは意外でした」とか感想をもらうことはあります。

――振りをつける段階で、その音源は完パケなのでしょうか?

竹中  本人じゃなくてデモの歌声だったり、アレンジが完成版じゃなかったりということはしょっちゅうあります。振りを作り終わってからアレンジがガラッと変わることは結構あります。テンポが変わることはさすがにないかな。

――昨年末に行なわれた「ハイスパートキングダム」3公演で、アプガは約2時間、会場内の4つのステージを走り回りながら、ほぼ歌い踊りっぱなしというすさまじい世界を見せてくれました。

竹中 「もう、どこに向かっているんだ」っていう……。富士山(の山頂ライヴ)や自衛隊(の教練体験)もあって……。

――無我夢中で何かに向かい、何かと戦っていることが、何か熱いものとして心をゆさぶるんです。

竹中 だんだん(仮)が(狩)に見えてくる。狩猟民族みたいな。そっちに向かっていくのかなって、なんとなく思ってます。

――レッスンをつけているとき、竹中さんもあの激しい動きをメンバー分、実際になさっているのですか? 2時間踊りっぱなしで踊って、「私を見て覚えて!」という感じですか?

竹中 全然違います。振付師ってそんなに世間から思われているほど動かないので(笑)。自分が動いちゃうと見えないじゃないですか、メンバーが。たとえばレコーディング・スタジオでアイドルが歌っているところに、プロデューサーが立ち会って指示を出しますよね。そのダンス版です。私が指示して、メンバーが踊る感じです。

――「とんでもなく運動神経の良いひとが振り付けたのだろう」と、ぼくはアプガのダンスを見るごとに思ってきたのですが。

竹中 体育はめっちゃ苦手です。体育大出身なんですけど、球技はぜんぜんできないです。そもそも世の中で勘違いされているんですよ、ダンスと運動神経って実はそんなに直接的に結びつかない。運動神経や反射神経が高いということは、たとえば予期せぬところからボールが飛んできてパスを受けるとか、瞬間瞬間替わっていくことに対応していく能力が高いということだと思うんですけど、ダンスは予期せぬことが起きないものだから。基本的には、音楽に合わせて反復練習で何度も同じ動きをして、もっと見せ方だったりとか、表現力を高めていくということなので。あずちゃん(関根梓)はダンスがすごい上手で表現力もあって、体の隅々まで動かすことができるんですけど、「運動は全然できない」って言ってましたね。よく見ると《アップアップタイフーン》でも下でメンバーを支えていないし、《Next Stage》の馬とびにも参加していないんです。

――ファンが踊るのも、アプガのライヴの特徴のひとつだと思います。振りコピだけじゃなくて、《バレバレI LOVE YOU》の通称“バレバレサークル”とか。

竹中 いま、もう会場全体がおしくらまんじゅうみたいに一体化してますよね。

――後ろのほうからもファンがかけよってきて一か所に密集するんですけど、“バレバレサークル”が終わった後、最前に割り込んだりすることなく、みんな元にいた位置に戻るんです。“安全な現場”だなあと思います。

竹中 アプガのファンは本当にお行儀がいい。紳士なんですよ。

――「ファンが振りコピする」ことを意識して、振りをつけているのでしょうか?

竹中 意識はしていますね。でもその前に「まずメンバーができるかな」というのがありますね。アイドル本人ができない振り付けじゃ意味がないから。その先に、「ファンのひとが真似できるかな、いやできないかな、もうちょっとここをこうしようか」ということは考えています。

――《ENJOY!! ENJO(Y)!!》では、メンバーが3人と4人に分かれて交差する振りが印象的でした。

竹中 あれは「四羽の白鳥の踊り」(バレエ「白鳥の湖」第2幕から)のイメージです。曲を聴いているうちに、3―4でつながって移動する場面が浮かんできた。でも最初、足元の部分は「さすがに歌いながらできないかな」と思ってもうちょっと簡単な振りにしてたんですよ。でもマネージャーさんに「あそこは四羽の白鳥のまんまやってください」って言われて、「マジですか、じゃそうします」って変えました。けっこう歌のことを考えて楽な振りにすることも多いんですが、マネージャーさんにはよく「もうちょっときつく」みたいな感じで言われます。

――マネージャーさん、強力ですね……

竹中 鬼軍曹ですよ……(笑)。《全力!Pump Up!!》も最初どう振りを付けようか悩んでしまって。EDMでも、あのタイプのEDMって実際煽りがメインの曲じゃないですか。イントロの振り付けでは今、トレーニングみたいなことをしているんですが、最初はすごい激しい動きにしてたんですね。ひとりひとりが音に合わせてすごく素早く動くみたいな感じだったんですけど、「トレーナーの先生にここだけ振りをお願いしてみましょうか」ってなって、今の形ができたんです。[次回2/23(月)更新予定]

・公式ブログ
「チロリアンぶろぐ」http://ameblo.jp/takenakanaketa/
・公式Twitter
@723takenaka

(更新 2015.2.16 )


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プロフィール

原田 和典(はらだ・かずのり)

 北海道出身。ジャズ誌編集長を経て、現在は音楽、映画、演芸など様々なエンタテインメントに関する話題を新聞、雑誌、CDライナーノーツ、ウェブ他に執筆。著書は『元祖コテコテ・デラックス』『世界最高のジャズ』他多数、共著に『アイドル・ソング・クロニクル2002-2012』等。ブログ「原田和典『ブログ人』」に近況を掲載。twitterアカウントは @KazzHarada