書評『ザ・タイガース 世界はボクらを待っていた』磯前順一著 |AERA dot. (アエラドット)

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《新書の小径 (週刊朝日)》

ザ・タイガース 世界はボクらを待っていた 磯前順一著

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青木るえか#新書の小径

加橋かつみの謎が深まる

 私が物心ついた頃にはタイガースは解散しちゃっていたが(確かやはり解散したテンプターズ、スパイダースのメンバーたちとPYGを結成するとかの時期だ)、とんでもなく人気があったグループであったことはわかっていた。しかしリアルタイムで知らないので、「当時の空気の中でその音が流れたらどうだったのか」という実感はわからない。しょうがないから書籍で研究、ということになる。
 タイガースはオリジナルメンバーで再結成ライブがあるせいか、最近よく関連書籍が出ている。そういう本を端から読んでみて思うのは、やはりタイガース時代の沢田研二を見たかったということだ。だって、大人しくて物静か、でもみんなの視線を惹きつけてしまうって、中学高校生あたりがマンガの主人公に設定したくてしょうがないようなキャラクターじゃないですか。今、藤山直美と共演して浪花のアカン男を演じる沢田研二も充分にステキなオッサンだが、若い頃はさぞや。
 そして謎が深まるのが、六九年に「失踪」がニュースとなった加橋(かはし)かつみの存在ですよ。いつまでたってもこの人の素顔がよくわからない。でも、存在感は沢田研二とはまた別の種類の大きさっぽい。私が高校生ならこっちにハマるかもしれない。
 本書はいろいろあるタイガース関連書籍の中で、一冊読んだら「タイガースのいろいろな概略」がわかった気分になれる良書です。でも「わかった気分」だけじゃ物足りない人もいるだろう。この本に多数引用されている『キャンティ物語』『俺は最低な奴さ』『安井かずみがいた時代』はみんな読んでるが、これらを読んでもタイガースの全貌はわかりません。周辺情報(たとえば当時の文化サロン「キャンティ」方面とか)には詳しくなるのだが。
 タイガースの蟻地獄にハマらぬためには、この本を読んで「わー、タイガースはすごかったんだなあ」と思っておくぐらいが適当なのではないだろうか。

週刊朝日 2014年1月24日号


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