9歳から5年間、単身イギリスに留学し、25歳からは2年間アメリカ・ニューヨークの演劇学校へ留学した経験を持つ岡本圭人さん。『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2023』(2022年7月29日発売)では、英語力という武器を手にした岡本さんが思う「子どもの英語学習」について話を聞いた。

MENU ■英語を話せたからこそ得られた幸福な時間 ■子どもは日本語で話したいんですよ

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 涙でぐちゃぐちゃになりながら、イギリス行きの飛行機に乗った9歳の自分。岡本圭人さんの最初の留学の記憶は「行きたくない」という思いとともにあった。

「そもそも一人でイギリスに留学したい小4男子っていないでしょ? 少なくともぼくの場合、まったく自分の意思ではありませんでした」

 誰の意思かというと「それはもう、父ですよ」と笑う。岡本さんの父は、俳優の岡本健一さん。昨年、初の親子共演の舞台が話題になった。

「雑誌の企画で父と対談したとき、初めて父に聞きました。なんでイギリスに行かせたの? 留学したいような子じゃなかったでしょ? って」

 父は笑った。答えは、なんとなくわかっていた。

「父が留学したかったんでしょうね。父は海外の演劇が好きですし、英語ができれば挑戦したいこともあったんだと思います。ぼくに夢を託したんでしょう。でもねぇ、ライオンじゃないけれど、谷底に突き落とされた感じでした」

 それもそのはず、9歳の少年はアルファベットすらまともに書けなかったのだ。留学先の小学校では小2のクラスに編入したが、学校でもホームステイ先でも、彼が理解できる言葉で話す人はいなかった。

「半年くらい、ぼくは全然話さない子どもでした。それでも生きていかなくちゃいけないので、『こう言えば食べ物が出てくる』『こう言えば場所を教えてくれる』と、赤ちゃんが言葉を覚えるように英語を学んでいきました」

 言葉がわかるようになると、学校生活も楽しくなった。2年間で飛び級を繰り返し、中学生になるころには年齢相応のクラスになっていた。

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神素子
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