2019年に当時現役最年少(34歳)校長として着任したことで話題になった「香里ヌヴェール学院中学校高等学校」(大阪府)の池田靖章校長と、探究型学習塾「知窓学舎」の塾長の矢萩邦彦さん。新しい教育手法を導入し、改革を続ける現役の中高一貫校の校長と、“受験や合格を目的としない塾”として話題の塾長が、昨今の大学進学について語り合いました。二人が親に求めるものとは?

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池田:先日、厚生労働省が2022年の出生数が過去最少の79万人だった、という数字を発表しましたが、子どもの人口は確実に減ってきています。いずれ首都圏を除く地方では、大学全入時代が来るんですよね。学歴の価値はどんどん下がっていって、企業の採用の人たちも学歴をあまり見ずに採用をし始めると思っています。

矢萩:そうですね。ただ、東京に関しては日本全体の人口動態とは違う動きをつづけることが予測され、本質が伴っているかどうかは学校によりますが、ブランド力はしばらく残ると思います。ただ、現在約800の大学がある中で生き残っていくためには、偏差値という指標はいったん置いて、どんな教員がいて何が学べる大学なのかという根源的なところに立ち返って「選ばれる学校運営」をしていかなければ、確実に淘汰されていきます。ただ、僕はそれ自体はすごく健全なことだと思っています。

池田:首都圏はまだイメージしにくいかもしれませんが、関西は劇的に志願者が減っています。結構有名な大学の倍率が1.0を切るということが学部レベルでは出てきているので、大学はもう、とてつもなく危機感を持っています。今高校では何が起こっているかというと、青田買いという名の中堅大学の指定校推薦が急増してきてるんですね。だから関西圏の大学、もしくは福岡とか名古屋など地方の大都市も一緒なのかもしれないですが、まあまあ幕末の京都の匂いがしますよ(笑)。

矢萩:なるほど。指定校推薦枠って、かつては毎年一定数の生徒を送らなければいけないというシバリがあったと思うのですが、最近は変わってきていますよね。そういう大学からのアプローチに対して、池田さんが校長をされている香里ヌヴェール学院中学校高等学校ではどのような対応をされていますか。

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江口祐子
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