小学2年生の息子を持つ40代の父親。授業参観に普段着で行ってしまい、「きれいな服を選ぶべきだ」と妻から叱責されました。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:8歳の息子を持つ40代の父親】

 都内の公立小学校に通う息子を持つ40代の父親です。先日、入学以来、初めての対面の授業参観がありました。仕事の都合で行けない妻に代わって参加したのですが、Tシャツにジーンズという普段着だったので、妻から「信じられない。授業参観や懇談会などの学校行事には、デパートで買ったようなきれいな服を選ぶのが当たり前」と激怒されました。でも7割方の保護者がその辺のスーパーやコンビニに行くような普段着で来ていましたし、きれいな格好のほうが浮いてしまう感じでした。また、保護者のなかには持参したアウトドア用の折りたたみ椅子に座ったり、スマホをいじったりしている人もいて、私はその人たちに比べれば親としてきちんとふるまっていたと思います。授業参観は保護者の服装のお披露目の場ではなく、主役は子どもたちのはず。その感覚でいてはいけないのでしょうか。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「子曰(い)わく、敝(やぶ)れたるおん袍(ぽう)を衣(き)、狐貉(こかく)を衣る者と立ちて、而(しか)も恥じざる者は、其(そ)れ由(ゆう)なるか」

「そこなわず求めず、何を用(もっ)てか臧(よ)からざらん。子路(しろ)終身(しゅうしん)之(こ)れを誦(しょう)す。子曰わく、是(こ)の道や、何(な)んぞ以(も)って臧しとするに足らん」(子罕第九)

・「敬(けい)に居(い)て簡(かん)を行う」(雍也第六)

【現代語訳】

・孔子はおっしゃった。「やぶれてボロボロの粗末な綿入れを着て、狐や貉(むじな)の上等な毛皮を着た人と一緒に立っても恥ずかしいと思わないのは、子路だろう」

「他人に害を与えず、無理な要求もしていないのに、どうして不善が発生しようか」。子路(しろ)はいつもこの一節を口ずさんでいたが、孔子がおっしゃった。

「それだけでは十分とは言えない。我々の目指す道はもっと遠くにあるのだ」

・自分の心持ちは慎み深くして、他人に対しては寛大に簡素に接する。

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/文献学者・中国学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。『ステップアップ0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など著書多数。母親向けの論語講座も開催。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族

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