【解説】


 お答えします。都会に生まれた人は地方に故郷がある人をうらやみ、地方の人は都会に生まれた人をいいなぁと思います。「隣の芝生は青い」といいますが、自分にないものにスポットライトを当てて考えたり、決断したりすると、深く暗い穴に落ち込んで、未来に進む力を失うだけですよ。

『論語』には、次のような言葉があります。

「子夏(しか)曰わく、小道(しょうどう)と雖(いえど)も、必ず観る可(べ)き者有らん。遠きを致すには恐らくは泥(なず)まん。是(ここ)を以(も)って君子は為さざるなり」(子張第十九)

 孔子の最もすぐれた弟子「孔門十哲」の一人で、文学に秀でていた子夏が言った言葉です。「小道」とは、芸事や分化した科目などの「細かな技術」のこと。訳すと以下のようになります。

「細かいことにも何かしらの取り柄があるが、遠大な理想を抱く人間にとっては、かえって細かい知識に拘泥して、障害となってしまう可能性がある。だから、先生(孔子)は細々とした道を学ぼうとしないのだ」

 相談者さんは、娘さんにとって「遠大な理想」、簡単にいうと遠い将来まで見据えた「人生の目標」は何だとお考えですか? まだあまりにも小さくて、正解は分かりませんよね。でも、だからこそ、より柔軟に明るい未来を展望する力を養う教育が必要なのです。その点では、地方も都会も関係ありません。

 さて、相談者さんが妻とすれ違う「進学」問題について考えます。「進学」という面で、都会のメリットは、「たくさんの選択肢がある」ということに尽きるでしょう。もし、娘さんにぴったりの学校が自宅から通える範囲にあれば、これほどいいことはありません。そこへ向けての受験準備を、早い時期からするのはベストな選択ではないでしょうか。

 ただ、注意して欲しいのは、周りに流されないことです。「少しでも偏差値の高い学校へ」「みんなより遅れないように」と、他者と娘さんを比べ始めると、焦ります。焦ると正しい判断はできなくなり、何のために勉強させたいのか、進学させたいのかも分からなくなり、将来後悔することになってしまうかもしれません。

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