世界のお金持ちが増えても、貧しい人は貧しいまま。このまま格差が広がると、世界はどうなるの? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、明治学院大学大学院教授の菅正広さん監修の解説を紹介しよう。

■貧困は誰のせい?

世界銀行によると、1日あたりの生活費が1.9ドル(約210円)未満という貧困状態(絶対的貧困)の人々は、世界で約8億人(2013年時点)もいるという。こうした人々へ支援の手を差し伸べることは緊急の課題だ。一方、先進国でもその国の平均的な水準に比べて所得が著しく低いという貧困(相対的貧困)が存在することを知っているかな? もちろん、日本も例外ではない。

 貧困は世界のどこにいても、いくつかの要因が重なれば誰にでも起こりうる。それなのに「貧しい人は努力が足りない」「能力がない」「運が悪かった」など、個人の問題として考えられてしまいがちだ。でも社会の構造に問題がある以上、個人の問題ではなく社会の問題として考えなければ、ますます格差は広がっていく一方だろう。

【キーワード:絶対的貧困】
栄養不良や高い乳児死亡率など、人間として最低限度の生活を営むことができない貧困状態。最貧国と呼ばれるアフリカ・南アジア地域に多い。
【キーワード:相対的貧困】
国民を所得順に並べたとき、真ん中の順位の人の50%以下の所得しかない状態。日本やアメリカなど先進国にも多く存在している。

■お金持ちに都合のいい社会のルール

 今、世界のほとんどの国の経済は自由市場というしくみで動いている。個人や企業などがそれぞれのもうけを最大限に追求し、自由に競争し合うことで世界全体の富が増えれば、貧しい人まで恩恵が行き渡るという考え方だ。でも実際にはそうはなっていない。社会のルールづくりは一部のお金持ちが影響力を行使することが多く、彼らにとって都合のよいルールは、なかなか変えることができない。

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AERA dot.編集部
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