食欲の秋は、ただでさえ体重が増えやすい季節。そこに「夜更かし」が加わると、太りやすいものを食べたくなってしまうという。キーワードは「レム睡眠」。マウスを使った研究で、レム睡眠と食欲と脳の関係がわかってきた。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介しよう。

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 睡眠不足だと太りやすくなる─昔から多くの人々がそう感じ、研究を行ってきた。その結果わかったのが、睡眠不足と食欲との関係だ。睡眠不足の人は、十分に睡眠を取っている人に比べて甘いものや脂っぽいものなど、太りやすいものを食べたくなるというのだ。また、睡眠には、左ページの上に示したように「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があるが、このうち、レム睡眠が不足したときに、太りやすいものを食べたくなることが多いという。しかし、これまでの研究では、そんな現象が起こるしくみはわかっていなかった。

 睡眠は脳がコントールしている。レム睡眠が不足すると、脳ではどんなはたらきが起こり、太りやすいものを食べたくなるのだろうか。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構のミハエル・ラザルス准教授らの研究グループは、マウスを使って、レム睡眠の不足が食欲にどんな影響を与えるか、特に、太る原因になりやすい砂糖や脂質(脂っぽいもの)への食欲と脳との関係を調べた。

 マウスはヒトと同じ哺乳類で、脳のつくりは基本的に同じだ。マウスの睡眠もヒトと同じようにレム睡眠とノンレム睡眠に分けられる。だから、マウスでわかったことは、ヒトにも参考になると考えられるのだ。

■睡眠不足のマウスで砂糖と脂質への食欲を調べた

 研究グループはまず、マウスをレム睡眠不足にさせる方法を編み出した。それは、マウスを、餅を焼くときのような網の上で生活させるというもの。こうすると、マウスのレム睡眠が極端に減ることがわかった。

 次に、マウスに砂糖の多い餌、脂質の多い餌、ふつうの餌の3種類を与え、どれをたくさん食べるか観察した。すると、レム睡眠不足のマウス(B)は、レム睡眠が足りているマウス(A)よりも、砂糖の多い餌や脂質の多い餌をともに多く食べた。

 続いて研究グループは、レム睡眠不足のマウスの脳に注射をして「前頭前皮質(前頭前野)」という部分の活動を抑えるようにした。前頭前皮質は、判断、意思決定などを担う部位だ。

(C)の餌の食べ方を観察すると、脂質の多い餌はふつうのマウス(A)よりたくさん食べたが、砂糖の多い餌を食べる量は、増えはしなかった。

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上浪春海
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