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日常使いの美しい食器や茶道具、彫刻などを手掛け、日本のみならず台湾でも人気の高い陶作家の安藤雅信(あんどう・まさのぶ)さん。以前から茶道具全般を制作していましたが、台湾の茶人との出会いがきっかけで、17年前からより力を入れて台湾茶などに使う茶器の制作や、茶会の開催などを行っています。安藤さんから見た台湾の茶文化の魅力とは? 岐阜県多治見市にある、自らが主宰するギャラリー「ギャルリ百草」を訪れました。

台湾から多治見へ茶器を買いに。陶作家と茶藝師の海を越えたつながり 安藤雅信さん/陶作家


なぜ、多治見のギャラリーの存在が
知られていたのか?

――コロナ禍以前は毎年台湾に行っていたそうですが、安藤さんと台湾との出会いについて教えてください

2000年に入ってから日本で日常使いの器ブームが起きて、多くの雑誌が器特集を組むようになります。「ギャルリ百草」に来られるお客さんも若い層にガラッと変わり、台湾の方もいらっしゃるようになりました。その流れで2004年ごろに、台北でギャラリーとお茶の教室を運営されていたカリスマ茶藝師の李曙韻(リ・シュウユン)さんが、お弟子さん何人かを連れてここに来られました。李さんとの出会いが一つのきっかけになりました。

安藤さんの作品が常設展示されている「ギャルリ百草」2階スペース。茶器の種類もさまざまあり、台湾で個展を行うとすぐに売り切れてしまう

――わざわざ台湾から岐阜の多治見まで来られたんですね

そうなんです。李さんに「どうやって百草のことを知ったの?」って聞いたら、「台北の紀伊國屋書店に日本の雑誌が売ってます。だからあなたのことはみんなよく知ってる」って言うんです。

独自に発展した台湾の茶藝文化

――そのころはまだ本格的に台湾茶のための茶器はつくっていなかったと思いますが、李さんは何を求めに来られたんでしょうか?

台湾の方が特に欲しがったのは片口です。台湾の茶人たちが、それを茶海(*)として使い始めました。李さんによれば、当時、台湾の陶芸家で片口をつくる人はほとんどいなくて、それに陶芸家はとても高い値段を付けているそうで。 
  
僕はもともと普段使いのソース入れとしてつくってたんです。で、ある金工作家に「私たちは注ぎ口から一滴でも外に垂れたらクレームがくるけど、焼き物はそういうのないでしょう?」と言われて一念発起、一滴も垂れない片口をつくったら、それを李さんが買ってくださった。

*茶海=お茶を茶壺(急須)から移すピッチャー。これでお茶の濃さを均一に保つ

台湾の茶人たちがこぞって所望する安藤さんの銀彩の片口。全体のたたずまいだけでなく、流麗な湯の流れを生む注ぎ口の細やかな造形など、すべてが美しい

――新しい茶道具を探していたんですね

1970年代に台湾で乾泡式工夫茶(カンパオシーコンフーチャー)という淹れ方が開発されました。それは茶海や茶盤などを使い、テーブルを濡らさず小さな茶杯に何回かに分けて淹れるスタイルで、今の作法のスタンダードになっています。李さんはシンガポール出身で台湾の大学に留学した方で、この乾泡式工夫茶の第二か第三世代くらいになるのかな。

彼女は日本の茶席の概念を台湾に持ち込んで、劇場茶会というのを始めました。映画館を借り切って、そこに竹林とか劇的な舞台をつくって茶会をして、台湾でも大きな賞をとられています。その李さんの本に僕の片口が載って台湾でもわーっと広まった。それで李さんに個展をやってほしいと頼まれたんです。「日本人作家は作風が広いし、値段もリーズナブル。お客様の要望も受け入れたりするので、その姿勢を台湾の作家に知ってもらいたい」って。でも、そのころ、僕はまだ台湾茶を深く理解できていなかったし、器制作が忙しかったので台湾に行く気になれなくて、僕自身は行かず作品だけ送りました。今考えると慎重すぎたなあと思いますね。

畳の上でもモダンなテーブルの上でもスッとその場に溶け込んでしまうシンプルな趣、ちょっとした歪みや手仕事ならではの質感に、ついつい惹きつけられてしまう安藤さんの器

――その後、最初に台湾に行った時はどういう印象でしたか?

お客さんは富裕層が多かったんですが、もう半端じゃなく富裕。展覧会の会場は普通のギャラリーでしたが、「ここでお茶会やります」って李さんのお弟子さんに連れられて行った場所は、日本にはないようなとんでもなく広い茶空間。そこに僕の茶道具を使った茶席がいくつも設置され、お弟子さんたちがそれぞれを囲んでいる。音楽は生演奏で、トークショーもして、この盛り上がり方はなんなの? これが普通なの?ってびっくりしました(笑)。でも、もっとも印象的だったのは、茶席に“侘び寂び”が利いて統一感があったことです。男女を問わず胡座を組んで座り、優雅で流れるような点前と凜とした空気。茶席の雰囲気にぴったりと合っていました。

2019年、「ギャルリ百草」で行われた李曙韻さんの著書『茶味的麁相(チャーウェイトーツーシャン)』の日本語版出版記念の茶会(画像は安藤氏提供)

――李さん以外に素晴らしいと思う台湾の方はいますか?

謝小曼(シエ・シャオマン)さんという京都と台北に台湾茶のサロンを開いている方もとてもセンスがいい。李さんと小曼さんの2人は見立ての能力がすごいですね。見立てというのは、本来とは違う用途でものを自在に使いこなせる発想力のことですが、例えば僕が展覧会でちょっと大きなボールやお皿を出したりすると、あの2人は「これは花も生けられますね」「お茶も点てられますね」って、見立ての世界によるクリエーションをお弟子さんの前で実際にやってみせています。

あと台中の陶芸家、呉偉丞(ウー・ウェイチョン)さん。伝統を継承しつつ、ちょっとモダニズムが入っているところがよくて、最初にアトリエにお邪魔して作品を見たときに、ただ者じゃないと思いました。この方とは台北のギャラリーで2人展もやりました。お互いにインスタでフォローし合っていて、彼は作品を毎日上げているから、いつもチェックしてます。呉さんは台湾らしく茶道具の領域をモダンに、美術というか彫刻のほうに広げる役割を与えられているような気もして、僕と立場が近いなと思います。

台湾の茶文化を守り、伝えていく動き

――安藤さんから見て、台湾のこの10年間にはどんな変化がありましたか?

この10年は台湾人のアイデンティティーをどう確立するかっていうことを多くの人が考えていたように思います。茶文化でいえば、茶産業を国の文化資産ととらえている台湾文化部が、台北の有名な茶藝センター「陸羽茶藝中心」の活動などを推奨しているし、茶農家では新しい茶葉をどんどんつくって、茶藝館も増えています。台湾の茶文化を守り、次世代に伝えていこうと努力していますね。それと新しい茶藝の提案に積極的です。見習いたいところです。

――特に好きな台湾のお茶はありますか?

台湾には標高の高い山がいっぱいあって、そこでできた茶葉って味わいが本当に澄んでいるんですよ。厳しい自然条件で栄養が簡単にとれないから、根っこがすごく頑張って水を吸い取る。それでおいしくなるんだそうです。だから台湾の高山茶はおいしくてクリア。他にも東方美人や貴妃茶などは、ウンカという虫が茶葉から栄養を吸い取るので、茶葉が一生懸命に発酵する。その発酵した東方美人や貴妃茶は本当に独特の素晴らしい香りがします。ウンカは無農薬じゃないとつかない。そういう点でも、とてもいいお茶だと思います。

――日本の茶道とは違う台湾のお茶の魅力は、どういうところだと思いますか?

作法が堅苦しくなく、自由なところ。それに日本の茶道だとお客さんが突然来ても、炉に火が入ってないとすぐにお茶を出せないし、約束事が多すぎる。だけど台湾のお茶ならサッとお出しできる。すぐにおもてなしができるというのは大きな魅力だと思います。1煎目、2煎目、3煎目と味がどんどん変化して、2時間でも3時間でもずっと飲み続けられるのもいいですね。健康志向や手軽さとお洒落さ、さまざまな点で現代人に合っていると思います。

あと僕は出張茶会もよくやるんですけど、茶道だと車いっぱいに懐石道具から茶道具まで積み込む必要があるけど、台湾茶の茶会だったら2箱か3箱くらい。道具がコンパクトでそれほど多種を必要とせず、楽しめるところがいいですね。若い人にとっては初期投資が抑えられることも入りやすくて助かりますね。

日本と同じで、今は台湾の若い人もあまりお酒を飲まないんですよね。若い人が自分の好みの茶器を使って、家で友達とお茶を楽しんでいます。西洋では現代美術の知識がないと一流の社会人として認められませんが、それと同じで、お茶を嗜むことで歴史や文化教養を身に付けようとする台湾の若い人が増えている傾向があるのは、とてもいいことだと思います。

築125年の古民家を名古屋から移築してつくったという「ギャルリ百草」。1階スペースでは安藤さん自身が推薦する他の作家の企画展が月替わりで行われている

安藤雅信(あんどう・まさのぶ)/陶作家

1957年岐阜県多治見市生まれ。武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒。和洋問わず使用できる2千種類以上の日常食器と茶道具、また焼き物だけでなく「結界シリーズ」などの現代美術作品も制作している。98年「ギャルリ百草」開廊。2000年、若手作家支援のため「studio MAVO」開設。『ギャルリ百草 美と暮らし』(ラトルズ)、『どっちつかずのものつくり』(河出書房新社)、『茶と糧菓』(小学館)など著書多数。李曙韻の著書『茶味的麁相』の日本語版(KADOKAWA)の監修もつとめる。

文/サウザー美帆 撮影/西川知里

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