迅速かつ丁寧に。医師の声を反映しながら人工関節を世界中に提供 林延生さん/聯合骨科器材股份有限公司
販売代理店から自社開発へ
医師の意見をいかに生かすか
ユナイテッドは1993年に設立された。もともとは米国のメーカーが開発した人工関節を台湾で販売する代理店だった。同社会長の林延生(リン・イエンション)さんが、人工関節を自社開発する会社を設立した経緯をこう説明する。
「米国メーカーの製品を販売する仕事をしていたとき、現場の医師からは『こんな製品を開発してほしい』という要望を含め、いろいろな声を聞きました。しかしながら、米国本社はそれに対応しようとはしませんでした。そうであれば自分たちで現場の医師の要望に沿った人工関節を研究開発しようと考えたのです」
台湾の人工関節市場はもともと大きくないため、欧米、日本など海外主要国で成長できるビジョンを最初から描いていた。①国際的な標準に達する品質の高い製品を開発すること。②欧米の大企業に負けない製品をつくること。③欧米の大企業にはない「オンリーワン」の技術を開発すること。この三つを基本とするビジョンだ。人工関節など医療機器の製造販売には当局の認証を得る必要がある。一般的には海外のほうが認証のハードルは高いといわれるなか、同社では研究開発に約10年をかけて米国食品医薬品局(FDA)など主要各国の認証を取得することに成功した。同社の製品の特長や革新性について林さんはこう続ける。
「1970年代ごろから人工関節の構造は基本的に変わっていません。当社の製品も構造自体を変えるものではありませんが、どうすれば現場の医師が移植手術しやすい人工関節をつくることができるか、欧米、台湾、日本などの医師の声を参考にしながら社内で研究開発を進めてきました」
一般的な人工関節の手術は、患者の骨を削り、そこに人工関節を移植する。医師にとっては人工関節の向きや角度などをさまざまに微調整しながらのとても難しい手術になるという。その手術を担当する医師の細かな意見を、すぐに人工関節の再設計に生かせるスピードと柔軟性がユナイテッドの最大の強みだと林さんは強調する。
患者をイメージしながら
担当工程以外にも責任を持つ
高い品質と安全性は医療機器メーカーが最も重要視しなければいけないものだ。ユナイテッドの品質と安全性に対するこだわりは「Each step We care」の言葉に端的に表れている。設計、製造から出荷までのさまざまな段階で厳しい品質検査が行われる。各段階での検査に合格したものだけが、次の工程に進むことができる。
「1000個の中の1個でも不良品があれば、医師や患者に迷惑をかけることになります。当社では厳しい検査を通過した製品を出荷しています」(林さん)
社員は自分の担当する部門だけ品質検査に合格すればいい、あるいは製品を出荷したらそれで終わりという意識ではなく、製造工程のすべて、さらには同社の製品が移植手術に使われる場面や人工関節の移植を受けた患者がどのような生活を送るのかまでを常にイメージしながら自ら担当するセクションの仕事を進めているという。
「社員の姿勢はものづくりにおける日本の職人気質にも通じるものがあると思います」(林さん)
「他社がやらないなら自分たちで」
特殊な症例のために開発した
ユナイテッドの約30年の歴史は大きく二つの期間に分けることができる。最初の20年間を国際舞台で通用する製品を開発するための「準備期間」として位置づけ、社員の教育、製品の研究開発体制・販売ルートの確立などに取り組んだ。その後の10年はユナイテッドの製品を世界に展開するため米国、フランス、スイス、英国、ベルギーなど世界各国にディストリビューターを置き、医師に直接製品を販売するネットワークを整えていった時期だ。林さんが話す。
「当社の競合会社は4社あります。いずれも欧米の企業で創業から80年、100年という長い歴史をもつ会社です。それに対してわずか30年の経験しかない当社が競合他社に伍していくためには、常に新しい製品を開発し、医師に提案していくしかありませんでした」
どのメーカーの人工関節を使うかの決定権は基本的に現場の医師にある。医師の声に沿った製品開発を地道に続け、さらには臨床試験に基づく安全性のエビデンスを医師に示すことで、ユナイテッドの人工関節の認知を広げていった。医療分野や学術分野でのKOL(キー・オピニオン・リーダー)に同社の製品を紹介してもらうなどの取り組みも積極的に行った。そして、いまでは同社の人工関節は世界約40カ国で50万件以上の移植手術に使われるようになった。
なかでも研究開発に3年をかけた四肢再建用の人工関節システムは、「台湾エクセレンス2022」金賞を受賞した。患部を多数切断する必要がある骨腫瘍を患った患者や、重度の骨欠損を伴う大きな外傷を負った患者に向けた製品で、患者の骨を可能な限り保持することをめざして設計されている。米国のマウントサイナイメディカルセンターの整形外科で採用されているほか、これまで欧米を中心に約280件の移植手術に使われているという。
「特殊な症例の患者向けに開発した製品です。マーケット自体が小さく利益が出ないため、大企業が重視してこなかった分野ですが、当社は患者のためを思ってあえて開発しました。医師には手術の新しいオプションを提供することができます」(林さん)
「既存のメーカーが医師の声を反映した製品を開発しないのであれば、自分たちでつくろう」。創業時の志を象徴するような製品といっても過言ではないだろう。
日本にも拠点
高齢者の日常をサポートしていく
日本を筆頭に先進国では急激な高齢化社会を迎えている。加齢に伴い、関節に対する負担は大きくなる。人工関節の需要は今後も大きく伸びていくと予想される。そんな高齢化社会でユナイテッドはどのような貢献ができるのだろうか。林さんはこう話す。
「人工関節は20年、30年と使い続けることができるものです。当社が開発した人工関節が高齢者の日常生活をサポートすることにつながれば、医療機器メーカーとしてこれほどうれしいことはありません。人工関節の分野において日本は欧米に次ぐ大きな市場です。5年前には日本にディストリビューターの拠点を置きました。これからの高齢化社会に貢献できたらと思っています」
聯合骨科器材股份有限公司
United Orthopedic Corporation
文/西島博之 撮影/熊谷俊之 通訳/長谷川あゆ
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